「穴太積み」を継承する第15代穴太衆頭として聞思堂の建設に携わる 粟田純徳(すみのり)さん 滋賀県在住 43歳
石の声に耳を傾け
○…自然の石を加工せずに組み合わせて積み上げる。千年以上前から続く石積み技術「穴太(あのう)積み」を継承する第15代穴太衆頭として、善了寺の第二本堂「聞思(もんし)堂」の建設に携わる。現在、この技術を継承しているのは粟田家のみ。「石も人と同じでいろんな奴がいるんです。どんな形でも必ずぴったりの場所がある。適材適所という言葉の通り、その場所を見つけてやるのが僕らの仕事です」
○…粟田家に長男として生まれ、中学卒業後すぐに第13代の祖父が師となり修行を始めた。辛かったのは作業の大変さでも遊べないことでもなく、祖父の厳しい指導。名前で呼ばれない、給料も少ない、不満があっても文句も言えない状況だった。「祖父の口癖は、『時間がない』。教えられるうちに技術を叩き込もうとしてくれていたみたいですね。当時は怖いとばかり思っていたけど、亡くなってから偉大な人だったんだなぁと気付きましたよ」と懐かしむ。
○…高校生の娘と4歳の息子をもつ。全国各地で仕事をしているため、休みができた日は家でのんびり過ごすことが多い。年ごろの娘とは「気恥ずかしくてなかなか話もできない」、16代目候補の息子は「かわいいを通り越して憎たらしい」と少し恥ずかしそうに笑う。仕事の合間に友人と飲むのも息抜きのひとつだが、その楽しさの後の悩みは二日酔い。「二日酔いの日に作業すると調子がくるっちゃって、バランスの悪い”二日酔いの石垣”ができちゃうんですよね。やり直しになることもありますよ」と苦笑い。
○…4日には聞思堂で一般向けのワークショップも開催した。地元滋賀県でも学校などで穴太積みの講習をしている。楽しそうな参加者の姿に思わず笑みがこぼれる。参加者に紹介した祖父の言葉「石の声を聞け」。「自分はまだ聞こえていない」と、作りかけの石垣をじっと見つめる。憧れの祖父の姿を思い出しながら、石の声に耳を傾ける。
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4月18日