鶴見大学は、このほど、「新古今和歌集」に収められたのち、編さん過程で削除された約800年前の未知の一首が見つかったと発表した。同大文学部の久保木秀夫准教授が、書式など様々な検証結果から発見した。同大は「800年埋没していた。たった一首だが極めて貴重」と話している。
発見されたのは、紫式部の夫の孫にあたる藤原隆方(1014〜1078年)が書いた一首「さのみやはつれなかるべき春風に山田の氷うちとけねかし」。隆方が思いを寄せる女性に向けて詠んだ歌で、「春風に氷が解けるように、打ち解けて心を許してほしい」という恋の歌だという。
この一首は、同大収蔵の奈良時代から江戸時代の写本を分割して貼り集められた、「古筆手鑑」の中から見つかった。
鶴見大によると、これまで見つかっている鎌倉時代初期の新古今の写本と、紙質や寸法、書式などが合致。詠まれた歌が、現在確認が取れている新古今のいずれにも載っていないことから、当初収録されたが、編さんの際に削除された一首であると確証を得たという。
また、新古今は数十年に渡って複数回編さん作業が行われており、途中で切り出された歌が多かったとされる。現在知られている切り出し歌は35首あるが、新出は40年ぶりとなる。
同大は今後、「さらなる証明のため、発見された一首の前後を探し出したい」としている。
意義ある367点
この歌が収録されていた古筆手鑑は江戸時代に製作されたもので、同大が昨年末、京都の古書業者から購入していた。中には藤原隆方の一首のほか、奈良から江戸時代に写された貴重な資料が367点貼り付けられている。
鶴見大は、「藤原隆方の一首が注目を集めているが、そのほかにも文化的、学術的に意義のある資料は多い。まだ初めての発見もあるはず。調査を続けたい」と説明する。
一般公開も
現在、鶴見大学図書館では、隆方の一首が入った古筆手鏡を中心に貴重書展を開催中。同図書館は、「本当に貴重。その奥深さを堪能してもらいたい」と話す。
10月27日まで。入場無料。平日午前8時50分〜午後8時、土曜〜午後6時、日曜・祝日は閉館(27日は展示のみ〜午後5時半)。
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