2014年8月、鶴見区内の介護施設から認知症の男性が行方不明になり、東京都内で遺体となって発見された。鶴見警察署によると、認知症の人が行方不明になるケースは増加傾向にあるという。さまよう認知症の人々をどうしたら安全に見守ることができるのか。
死亡した男性は、介護施設から行方不明になった。施設内での見守りに課題はなかったのか。
「利用者から絶えず目を離さないようにするのは難しい時もある」と区内の別の施設は話す。この施設では利用者9人に対し、3人のスタッフを配置。利用者はなるべく一つの部屋に集め、一人にならないようにしている。しかし、マンツーマンでの世話が必要な場合、全員に目を行き届かせることは難しい場合もあるという。
日常から観察必要
この施設でも認知症の利用者が一時行方不明になるケースを経験している。施設入口の施錠や、扉を開けると音が出るようにするなど、対策を講じている。また、町会の行事に参加するなど、日頃から地域と顔の見える関係作りも心がけている。「徘徊の症状のある人は、『施設から出たい』『家に帰りたい』などの気持ちがある。日頃の行動を観察しその気持ちを察し、その人の症状に合わせた工夫も必要」
声かけ勇気いる
死亡した男性のケースでは、東京都内で遺体となって発見されるまでに警察などが複数回接触していながら、男性が認知症であることに気付けず、保護に至らなかった。長距離を移動してしまう前に、地域住民が異変に気付くことはできなかったのか。
認知症を正しく理解し、当事者やその家族を見守るための認知症サポーターの養成者は、「徘徊している認知症の人にはわかりやすい目印があるわけではない。気が付いたとしても一般の人が声をかけるのは難しく、勇気がいること」と話す。「本人の家族が写真を配るなどして、日頃から認知症であることを地域にオープンにしておくことも必要」という。
サポーター1万人へ
鶴見区は、認知症の人が安全に暮らせるよう、地域の見守りの目の育成を重視している。「見守りには、認知症への知識不足が一つの壁。偏見を恐れ認知症だと明かせない人もいる」と区の担当者は話す。
そのため区は「認知症サポーター」を14年度の約8千2百人から16年度末までに1万人に増やす施策などを打ち出している。
4月23日には、鶴見区自治連合会婦人部向けに認知症講演会が行われた。浅賀恵美子婦人部部長は、「認知症は家族だけの問題ではない。地域で見守っていかなくては。自分ごととして考えるきっかけになった」と話していた。
町全体で見る仕組みを
地域で認知症の人を見守っていくためには、具体的にどんな形を目ざしたらいいのか。
高齢者支援などを行う地域包括支援センターの一つ・鶴見市場地域ケアプラザゆうづるは、「自治会程度の範囲での見守りが理想」と話す。「24時間365日家族が付き添い続けるのは困難。自治会レベルで迷っていたら声をかけ、自宅まで送迎できるような仕組みが地域に根付けば」。
そのためには周辺住民が認知症への理解を持つことが求められる。「どこまで誰に周知するか、情報の管理をどうするかは課題。偏見も未だ残る。まずは認知症を正しく理解し、対岸の火事と傍観せず、何ができるか考えてほしい」
区内に5千人超
15年1月現在、鶴見区内の高齢者の数は5万6281人。認知症の人は5000人以上いると見られ、その数は今後増えると予測されている。また、14年1年間に鶴見署管内で行方不明の届出があった認知症の人は9人だった。同署は「全国的に増加傾向。今後も増えていくのでは」と分析する。
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