鎌倉ジュニアオーケストラの代表兼指揮者を務める 田辺 四郎さん 栄区在住 82歳
音楽通じ成長見守る
○…30周年を迎えた鎌倉ジュニアオーケストラ(KJO)。1984年の立ち上げから代表兼指揮者として、子どもたちの指導にあたってきた。現在は8月24日の定期演奏会に向けた練習が佳境を迎えており、子どもたちを優しい眼差しで見守る。「ここまでやってこられたのは周りの支えがあってこそ。感謝しています」と語る。
○…川崎市出身。中学3年の時に終戦を迎え、戦後の人員不足から17歳で小学校の教員となった。30代の頃、娘が病気になり自然の多い鎌倉へ。しばらくは川崎まで通勤したが「体力的に厳しくなって」と50歳で深沢小の音楽教諭に。そんな時、NHKで放映された千葉県の小学生オーケストラの演奏と出会った。「力強く圧巻だった。同時にうちの児童も優秀だからできるのでは、と思った」と楽団の立ち上げに奔走。鎌倉市を中心とした、子どもたちによるオーケストラが誕生した。
○…「技術至上主義じゃなくて、子どもを育てるための楽団にしたい」と入団は初心者から受け付け、演奏会には必ず全員で臨む。通常のオーケストラにないサックスをやりたい子どものために、楽譜を書き直すことも。最も印象に残っているのは「白鳥の湖」に挑んだ発足2年目の演奏会。「拙い部分もあったけれど、わずか1年でこんなに美しいハーモニーが出せるようになったと思うと自然と涙が溢れた」と振り返る。以来、自主性を重視した指導で音楽を通じた成長を見守り続けてきた。「音楽好きが集まるからストレスが無い学校みたい。子どもたちの成長を間近で実感できるのが本当に幸せ」と笑う。
○…娘が独立し現在は妻と2人暮らし。KJO以外にも岩瀬中や御成中の吹奏楽部を指導するなど、忙しい日々を送る。「一所懸命な子どもたちが本当にかわいくてね。大変でもつい見てあげたくなっちゃうんです」。そう言うと目じりに皺を寄せた。