鎌倉警察署長に就任した 伊藤 守さん 雪ノ下在住 57歳
ピュアな正義感でまちを守る
○…鎌倉警察署の署長に就任して1カ月。「鎌倉は歴史ある観光地で、県内でも重要なまち。治安の良さを今後も維持しなければ」と姿勢を正す。「先日の台風といった災害や犯罪に対する危機意識を日頃から抱いてもらえるよう、広報活動に力をいれていきたい」と意気込みを語る。
○…千葉県生まれ、横浜市育ち。大学卒業後は民間企業に就職するも「もっと真剣勝負できる仕事がしたい」と25歳で警察官へ転身。金沢警察署からキャリアをスタートさせた。高津や宮前、瀬谷など川崎・横浜を中心に勤務した。前任の県警本部では、サイバー犯罪対策課の立ち上げに尽力し、昨年、警察庁長官賞を受賞した。「産声をあげたばかりの部署だから、今後に期待したい」と話す。
○…警察官人生のなかで20年以上、少年係で勤務。複雑な事情と心を抱えた少年、少女たちと向き合ってきた。ある時、非行行為で補導された少女を担当。言い訳ばかりで反省が見えないその態度に、つい語気を強めて叱ったという。すると少女は「わっ」と泣き出した。「警察官はどんな時も感情的になってはいけない。しまったと思った」が、返ってきたのは意外な一言だった。「こんな風にちゃんと叱られたのは初めて。うれしい」。「規則も大事だけれど、何よりも『この人を救いたい』というピュアな正義感が警察官には欠かせない。決めつけや上からモノを言うのではなく、一人の人間として向かい合う。簡単そうでとても難しいんだよ」と穏やかに語る。今はその経験を、後輩たちに伝えている。
○…「せっかく鎌倉に来たのだから、まち巡りをしようと思って」と最近、自転車を購入した。報国寺を中心に、近々二階堂を散策する予定だという。最愛の一人娘は結婚式を控えており、「喜ばしいことだけれど、本番は泣いちゃうかもしれないなあ」。この時ばかりは父親の顔に戻って、複雑な心境を明かした。