葛原岡神社の「良縁むすび・さくら貝御守」を制作している 仲村 公一郎さん 材木座在住 70歳
桜貝がつないだ縁
○…葛原岡神社で、若い女性たちを中心に人気となっているお守りがある。淡いピンク色で開いた形状がハートに似ていることから、縁結びの効力があると言われる桜貝をストラップに加工したものだ。このお守りを手作りし、5年ほど前から同社に納めている。「好評だと聞いてうれしい。自分の世界も広がりましたし、桜貝には縁をつなぐ力が本当にあるんだな、と実感しています」とほほえむ。
○…材木座生まれ。小学校入学前と5年生のときに結核を患い、休学を余儀なくされた。「自宅療養で友達に会うことも叶わなかったから退屈で寂しくて」とよく砂浜に出かけた。「一面に広がるきらきらとしたピンクの輝きに心を奪われ、桜貝収集に夢中になった。当時は唯一の友人、という感じだった」と振り返る。病状が回復してからは大好きな海でサーフィンを楽しむなど充実した青春を送った。就職後も地元を離れることはなく、サラリーマン人生を全うした。
○…退職後に受けた健康診断で医師から生活習慣病を指摘された。「まさか自分が、とショックだった」。そこで始めたのが、材木座海岸での散歩。滑川までの道のりで幼少期に孤独を紛らわしてくれた桜貝に「再会」した。「何十年もの時を経てもやはり美しいと感じた」と再び集め始め、ストラップや置物に加工するように。通院中の病院に展示すると、これを見かけた人の紹介で葛原岡神社からお守りの制作を依頼された。「ここまで人の輪が広がるとは思わなかった。今が楽しいのも桜貝のおかげですね」と朗らかに語る。
○…妻や娘に協力してもらい、年間9千個ものお守りを制作する。「磨けば磨くほど色合いが深くなるところがたまらなく好き」と桜貝を愛しげに見つめる。昔からカメラが趣味で、お守りの台紙には自身が撮影した海の写真を採用。「所属しているサークルにも、今年はもっと顔を出したいですね」と笑顔を見せた。