古着で織った作品を建長寺などで展示する染織作家 河本 蓮大朗さん 二階堂在住 29歳
時に思い馳せ、古着織る
○…カタンカタンと心地良い織り機の音が鳴る。思い描いたデザインに沿って、古着を裂いた素材で作品を織っていく。現在ギャラリーピクトルで開催中の個展に加え、きょうから3日間、建長寺の方丈(龍王殿)での展示も行う。「紀元前からある織物には、その地域や時代ごとに、人の生活や文化などが見える。古着も時代が感じられて面白い」と語る。
○…二階堂生まれ。仏師と彫刻家の両親の影響もあり、幼い頃から芸術は身近で、工作や絵は得意だった。ファッションや音楽など、興味のあるものが多く専門分野を模索している中、進学した横浜美術大学で惹かれたのが織物。「何でも素材になるのが魅力」と話す通り、表現したいものに合わせてビニールや新聞を使うこともある。パーカーの紐を通すハトメや洗濯表示の書かれたタグが織る中で表に出てくるのもあえてそのままに。「これが面白い」と笑う。
○…布の柔らかさや弛みを生かして壁や天井に吊るす作品や、絵画のように額装したもの、壺や枯山水の石をイメージした立体作品など、作風は幅広い。学生の登竜門的アートコンペのCAF賞などにも入選。2019年には、新潟県の五泉ニットとコラボし、新宿駅前のショーウインドーを作品が飾った。「制作の息抜きに楽器を弾いたり、粘土で立体作品を作ったりもする。その中でアイデアが湧くこともありますね」
○…今回は「時の布」がテーマ。展示作品約30点はすべて新作と熱が入っている。「禅宗の伝来や茶の湯の興隆など、禅と織物は関係が深かったようで、大覚禅師が好んだ『無限の清風』という言葉からもイメージを膨らませた。過去から現在、未来へと、さまざまな『時』への思いを感じてもらえたら」