世界最大規模の2つの国際写真賞で入賞したフォトジャーナリスト 高橋 智史さん 浄明寺在住 40歳
「命がけの一瞬」、世界へ
○…パリ国際写真賞に続き、世界最大規模の米国の国際写真賞「インターナショナル・フォトグラフィー・アワード」で5作品が入賞した。中でもプロ・報道写真、その他部門2位となったのが、カンボジアの人権弾圧に立ち向かう女性活動家テップ・バニー氏の姿。15年間、自身も命がけで取材してきただけに思い入れも強い。「受賞を機に彼女の願いと勇気に大きな光が当たれば」
○…秋田市出身。「戦争などで苦しむ弱い立場の人を支えたい」と学ぶ中で、現状を伝える重要性に気付かされた。そこで手にしたのがカメラ。1枚で現場の空気感や人々の思いを伝えられる写真には「強い力がある」と日本大学芸術学部写真学科へ進学。在学中の2003年から国外での取材を開始した。
○…危険と隣り合わせの仕事への「最大の理解者」である妻の地元・浄明寺へ移り住んで3年。鎌倉に来て、今も感じ続けているのは、カンボジアのアンコール・ワットのある街と似た独特の空気。「歴史ある観光地としての誇りや伝統、史跡、各地から訪れる観光客――。まだまだ知らない場所、シャッターを切ってみたい場所がたくさんある」と意欲的だ。
○…注力してきたカンボジアでの取材写真は、18年に写真集として出版。国内外の数々の写真賞を受賞した。コロナ禍で国外での活動が難しい今、主軸として撮影しているのが、冬の風物詩であるハタハタ漁や男鹿半島のなまはげ、国内最北のお茶など、故郷秋田県の「受け継がれしものたち」だ。場所やテーマが違っていても被写体の命がけの一瞬、情熱ある一瞬、今しかない一瞬を写す時に感じる「心の高鳴り」が自身をさらに奮い立たせる。「僕も命と情熱をかけて、シャッターを切り続けたい」