被災地支援を目的とした個展を開催している日本画家 村田 林藏さん 笛田在住 59歳
復興への思い絵筆に込める
◯…「震災が徐々に忘れられようとしていると感じていた」。3月9日まで、被災地の支援を目的とした個展を小町のギャラリーで開催している。故郷の岩手県花巻市は津波などの被害は受けなかったが、母が転倒して怪我を負い、鎌倉で「避難生活」を送った。被災地の現状と復興の進捗を常に気にかけており「今自分に何が出来るかを考えたら、やはり作品を見てもらうことだと思った」と語る。
◯…幼い頃から絵が得意で、高校2年生で応募した県の展覧会では一般参加者に混ざり2位に入賞した。「絵で食べていきたい」と決意し、東京芸術大学を受験するも不合格。しかし受験を終え帰郷する前に立ち寄った上野の博物館で、運命の出会いがあった。長谷川等伯の「松林図」を目にし「絵から深い精神性を感じた。素直に感動しました」と油絵から日本画への転身を決意。翌年、見事に東京芸大に合格し、大学では平山郁夫氏に師事した。卒業後は院展での入選を重ね、全国の百貨店や画廊で個展を開催。師・平山氏との縁もあり、16年前に鎌倉に住居とアトリエを構えた。
◯…今回展示するのは、岩絵の具ではなく、和紙に墨や水彩絵の具で描いた作品が中心。「日本の四季や風景を描くのに最も適した手法はやはり日本画。長く受け継がれてきた良さを、もっと気軽に感じてもらえたら」とその意図を口にする。故郷と日本画、自らを育て支えてくれたものへの強い思いが、鎌倉で初となる個展の後押しとなった。
◯…大学の同級生で同じく日本画家の妻・宏子さんとは卒業後すぐに結婚し、3人の男の子に恵まれた。子育ての間も夫婦それぞれが作品制作を続けてきた。今年6、7月には岩手町立石神の丘美術館で、初の夫婦展が開催される予定だ。「お互いに作品について感想を言いあったりすることも多い。そういう存在が身近にいることは心強いですね」。その作品と同様、優しく穏やかな口調で語った。