伝統鎌倉彫事業協同組合主催の第40回「鎌倉彫創作展」の事業委員長を務める 三月 一彦さん 台在住 61歳
鎌倉彫と寄り添い35年
○…1月21日(月)まで鎌倉生涯学習センターの地下ギャラリーで開催中の「鎌倉彫創作展」。その事業委員長に就いて、今年で2年目になる。40回という節目にあたり「鎌倉彫業界も変わらなくては」との思いから今回初めてアマチュアからも作品を公募した。ここ数年は60点ほどの展示に留まっていたものの、今回は183点もの応募があり、その内6割がアマチュアの手によるものだという。「いつもより大きいホールを借りたかいがあった」と満面の笑みを浮かべた。
○…大阪府出身。幼いころから木工が好きで、彫刻刀を使って幌馬車やハンドバッグなどを作ったりしていた。手先の器用さを活かす仕事にと高等専門学校を卒業後は東京の設計会社に就職。日々製図をひく生活を送っていた。2、3年した後、「橋なら橋で全体の設計ができると思っていたんだけど、実際は柱一つだけとか、細かいことしかできなくて」と理想と現実の違いに悩み、また仕事がコンピューター化される時代の流れに押され、設計の仕事に限界を感じるように。そんな折、新田次郎の小説「銀嶺の人」と出会った。そこに鎌倉彫の女性作家が登場し、その姿に憧れ伝統工芸の世界に夢中に。25歳で訓練校に入った。
○…訓練校の実習で塗りの魅力に目覚め、塗り師として職人の世界へ。仲間とともに鎌倉彫の会社「呂修庵」を立ち上げるも、数年後、結婚を機に独立。塗り一筋で子ども3人を育て上げた。塗りの材料、漆は繊細で日々の調整が欠かせない。「仕事は生活の一部。天気の次に漆が気になる」と笑った。
○…「彫りから塗りまで、全部一人で仕上げることができるのが鎌倉彫の特徴であり、魅力」と説明。鮮やかな紫陽花を模した皿や、鉛筆型の電気スタンドなど、その発想は型にとらわれず、自由だ。輪島塗なども勉強し「色々な表現に挑戦していきたい。まだまだこれから」と目を輝かせた。