「現代の名工」に選ばれた三菱プレシジョン(株)鎌倉事業所の社員 笠原 正弘さん 藤沢市在住 63歳
金属加工の道、一筋に極め
○…厚生労働省が卓越した技能者を表彰する「現代の名工」の一人に11月9日、選ばれた。上町屋の三菱プレシジョン株式会社鎌倉事業所で旋盤加工を担当し40年以上。「素晴らしい賞を頂いたとは思うけれど、毎日当たり前のことを続けてきただけ。これからもこの姿勢は変わらない」と真っ直ぐな眼差しで語る。
○…新潟県出身。幼い頃から工作が好きで水鉄砲や舟など、おもちゃを手作りしていた。ものづくりへの興味から工業高校へ進学。3年になり就職を考え始めたころ、担任から同社の鎌倉事業所を紹介された。「農家育ちだから、ごみごみした都会よりも自然が残っている鎌倉の方が良いと思った」と進路を決めた。
○…「コンピューターのない、何でも手でやる時代」から人工衛星用の部品など、ミクロン単位の精度を求められる仕事を数多く手がけてきた。とは言え「実際に宇宙に行ったところを見たことはないし、仕事の中身で力を加減するわけじゃないから」とそっけない。むしろ大きな事故を起こさずに仕事を続けてきたことが誇りという。「技術は人につくもので、人そのものが財産。事故なんてもってのほか」ときっぱり。その言葉に、技術一筋に生きてきた仕事人の矜持がにじむ。ささやかな楽しみは、加工した金属の切りくずを集めること。「らせん状のものや輝きが美しいものがあってね。見ていて飽きないよ」と子どものような笑顔を浮かべる。
○…現在は妻と2人暮らし。散歩が日々の息抜きだ。「育った土地が畑と山ばかりだったから、緑が多い場所の方がほっとする」と話し、近隣での一番のお気に入りは広町緑地。旅行も趣味で、「高校3年生のときの自転車での東北一周が忘れられない」という。旅先では、知らない飲み屋にふらっと入るのを楽しみにしている。「仕事から離れてのんびりと旨いお酒を飲むのがたまらない」と目尻にしわをよせた。