最高齢で鎌倉市優良農業者等表彰に選ばれた鎌倉漁業協同組合員 飯野 誠一さん 材木座在住 91歳
生涯現役貫く「紳士な漁師」
○…90歳を超えてなお現役の漁師として活躍する仕事ぶりが評価され、11月23日、鎌倉市優良農業者等表彰に選ばれた。早朝の漁を終えるとすぐにアイロンのかかったスラックスに着替えジャケットをはおり、午後の休暇をゆったりと楽しむ。その優雅な姿に所属する鎌倉漁業協同組合の漁師仲間からつけられたあだ名が「組合の紳士」。「長年続けてきたことが認められて、とてもありがたい」と穏やかな表情を浮かべる。
○…葉山町生まれ。8歳のときに材木座で漁師をする家の養子となった。「勉強嫌いで学校はさぼってばかりいたけれど、船が好きで家業は積極的に手伝っていた」。次第に一緒に沖に出て漁の基礎を学ぶようになり、中学卒業後の15歳で漁師として独立。水中メガネで海底を覗きながら魚介類をとるみずき漁が得意で、主にアワビを狙った。「仕事は盗むもの」と名人の船に乗り込んでは技術の習得に心血を注ぎ、始めは1日3kgほどだった漁獲高は20歳になると25kgほどに。「アワビがエサを食べようと少し浮いた瞬間を狙う。気づかれないよう素早く突くには、呼吸が一番大事なんだ」と力強く語る。
○…21歳で結婚し、4人の子どもに恵まれた。サラリーマンをしていた長男が40年ほど前に漁師へ転身。「せがれが継ぐなんて、諦めていたからうれしかった」と目尻にしわをよせる。視力の低下から70歳でみずき漁は引退したものの、まだまだ漁師としては現役だ。「たくさん捕れるとやっぱり気分がいい。海に出るのが楽しいんだ」と前向きに漁に臨む後ろ姿は、若手の生きた手本となっている。
○…現在は息子夫婦と孫と4人暮らし。30年以上通っているカラオケを日々の楽しみにしている。「持ち歌は800曲。100歳までに1千曲に増やしたい」とラジカセでの”自主練”も欠かさない。「漁もカラオケも好きなことをしているから元気でいられるのかな」と満面の笑みで語った。