昨年12月、建長寺派宗務総長に就任した 石澤 彰文さん 横浜市金沢区在住 70歳
「禅の思想広く伝えたい」
○…大本山建長寺と、そこに連なる建長寺派寺院の運営を担う宗務総長に昨年12月、就任した。これまでの約5カ月間を振り返り「知っていたつもりでしたが、名だたる神社・仏閣がある鎌倉の歴史の深さや醸し出す空気を改めて感じ、圧倒されています」と語る。
○…横浜市金沢区で、450年近い歴史を持つ長昌寺の住職の子どもとして生まれた。「潮騒を子守唄に」育ち、中学・高校時代は鎌倉学園で過ごした。「寺を継ぐつもりはなかった」というが、大学卒業後に「自分を見つめ直したかった」と京都・建仁寺の道場へ。4年半に及ぶ修業の日々を過ごした。しかしその後は出版社に就職。「忙しかったけれど、仕事は充実して楽しかったですね。24時間自身と向き合う修業時代と世間に揉まれる勤め人の苦労。その両方を経験できたことが、人生の大きな財産になっています」と笑う。
○…父の病を機に勤めを辞め、35歳で実家の寺を継いだ。以来、同寺に墓がある作家・直木三十五の業績の再評価に取り組んできた。代表作「南国太平記」から名をとった「南国忌」を毎年開催。直木賞作家や評論家に呼びかけて、講演会なども企画してきた。「永井龍男さんや井上ひさしさんなど鎌倉ゆかりの先生たちにも、様々な協力をしてもらいました。毎回直木賞の作品は気になりますね。最近のものはほとんど読んでいますよ」と微笑む。
○…急増する外国人観光客への対応は急務となっている。「関心を持ってもらえることはありがたい。何が求められているのかをしっかり把握しながら、日本文化や禅の思想について伝えることができたら」として、案内看板やパンフレットの充実を図る考え。また故郷・金沢区への思いも強い。「もともと六浦は鎌倉の東の玄関口で、称名寺をはじめ鎌倉時代や北条氏ゆかりの文化財も多い。鎌倉ともっと連携できたら、観光や地域の振興につながるはず」と意気込んだ。