妙本寺の第82世貫首に就任した 鈴木 日敬(にちきょう)さん 大町在住 55歳
「地域で親しまれる場所に」
○…鎌倉時代の1260年に創建され、日蓮宗最古の寺院として知られる大町の妙本寺。その第82世貫首(住職)に就任した。11月30日には同寺の開山、日蓮聖人に就任を奉告する晋山式を終えたばかり。「改めて身の引き締まる思い。伝統を守りながら、多くの人に親しまれる場所にしていきたい」と意気込みを語る。
○…東京都墨田区にある法性寺の長男として生まれたが「寺を継ぐことは考えていなかった」。早稲田大学法学部に進み「将来は司法試験でも受けようと準備していた」という。しかし進路選択の時期になると「幼い頃から身近に仏様がいた。自分を支えてくれた道へ進みたい」と思うように。卒業後、立正大学仏教学部で2年間学び、僧侶としての一歩を踏み出した。27歳の時には「1日7回の水行」「睡眠時間3時間未満」などその過酷さで知られる大荒行に挑んだ。「厳しい経験でしたが、極限に身を置くことで、自分の能力を知ることができた」と振り返る。その後も信徒の悩みや苦しみに向き合い、力不足を感じるたび荒行に身を投じ、33歳までに3回の「成満」を果たした。
○…実家の寺では、各地の寺院を巡る「お参りツアー」を企画するなど、地域住民と寺院とをつなぐ活動に取り組んできた。また46歳で東京東部の寺院をまとめる団体の責任者に就任すると、防災部を設立。任期満了の直前に東日本大震災が発生し、支援活動に奔走した。「緊急時、どうしたら不安と闘う人々の支えになれるのか。日頃から土台を固めることの大切さを改めて感じた」と話す。
○…現在は妻と3人の子どもを東京に残し「単身赴任中」。寂しさはあるが「憧れの場所だった」という鎌倉での生活を楽しんでいるという。「妙本寺ではこれまでも作品の展示会場として境内を開放するなど、地域の皆さんに門戸を開いてきた。お寺が皆さんの心に寄り添い、身近で頼られる場所になれば」と微笑んだ。