鎌倉彫白日会の会長 柏木 豊司さん 66歳
湧き出る創作意欲
○…コロナ禍で2度にわたり延期となった「鎌倉彫白日会60年のあゆみ展」。3度目の正直で展覧会が始まり、「やっと区切りがつけられた」と安堵の表情を浮かべる。鎌倉の伝統工芸を広く伝えるべく、慌ただしく動き続けている。
○…鎌倉彫を手がける白日堂(長谷)の創業者・伊志良不説氏が初代会長を務めた白日会。同会は、鎌倉彫教授会という団体の中に20弱ある会派のうちのひとつだ。自身も白日堂で職人として働いていたことから、2017年に白日会の3代目会長に就いた。趣味として鎌倉彫を嗜む会員たちに、「先生」としても接している。「私が先輩たちから学んできたことをすべて教えます。教えたことが1つでも次代に残ればいい」
○…横浜で育ち、図工や理科、美術、体育が好きな少年だった。高校卒業後は、新たに開校した鎌倉彫職業高等訓練校の1期生として入学。2年間学び、主に「彫り」の職人として白日堂で働き始めた。1988年に独立し、現在も暮らす逗子の自宅に工房を構えた。66歳になった今もなお現役で商品を作り続ける。伝統工芸に魅せられた職人の工房で流れるメロディーは、意外にもロック。「アメリカやイギリスの音楽が昔から好きで」。お気に入りのロックバンドは『ダイアー・ストレイツ』だという。
○…職人歴47年のベテランに、ここ数年でうれしいことがあった。鎌倉彫の普及の一環で始めた教室で、小学生や中学生を教える機会が増えた。「子どもたちが興味を持ってくれるのはうれしいよね。作品が完成して喜んでいる姿がかわいくて」と表情がやわらぐ。「彫り」と「塗り」によって、1点1点が異なる表情を見せる鎌倉彫。まだ見ぬ新作へ、職人の手は止まらない。