のどかな田園風景が残る海老名市の秋の風物詩として親しまれ、地域による地域おこしイベントの先駆け的な役割を果たしてきた「中新田かかしまつり」が、30年の歴史に幕を下ろすことが関係者への取材でわかった。今年の秋は開催されない。
「これまでのような、かかしまつりはもう開催できない。そのことを実行委員会で決めた」―。
県庁勤めだった1993年の第1回から、まつりの運営に参加し、2015年の第23回からは実行委員長を務めてきた廣田敏之さん(75)は、安堵と心残りが同居する胸の内を語った。
廣田さんによると、かかしまつりの運営を担う実行委員会は地域住民の高齢化による世代交代が思うように進まず、開催に向けた協力の要請や関係各所との調整が次第に難しくなっていた。関係者の他界も続くなかでコロナ禍が追いうちをかけ、2020年の第28回は中止、昨年の第29回は規模を大幅に縮小して「なんとか開催した」。
特にここ2年間のコロナ禍では従来のようなまつりが開催できず「ノウハウの継承が難しくなった」との空気が大勢をしめるようになり、5月15日の実行委員会で、中新田かかしまつりの継続断念を正式に決定した。
1週間かけて関係各所に向ける通知の文案を練り、5月24日から市役所など関係各所への連絡を始めた。「関係者各位」に宛てられたあいさつ文は「皆さまには長い間作品を出品して頂いたり、お手伝いを頂いたり、経済的な支援を頂いたりと多大な応援をして頂き感謝に堪えません」と感謝の言葉を添え、「今後は若い、意欲のある世代の地域住民の方々が中心となって作る新しい形のまつりとして生まれ変わることを期待しております」と締めくくった。
新旧住民の親睦
中新田かかしまつりは1992年に、中新田地区の新旧住民の交流と親睦の場として中新田営農組合が地元有志で、サラリーマンらでつくる米作りグループ水耕会に呼びかけて始まった。
世相を反映したユニークな作品が展示される模様が、テレビの全国放送にもたびたび取り上げられた。今では海老名市を代表する地域イベントとして市内外から認知されるようになった。
2019年まで4年連続の最優秀賞者で過去20年間、出品を続けた上今泉の会社員、井上肇さん(58)は「毎年5月から準備をする、かかし作りは自分にとって一番の趣味だった。ショックだが、夏の草刈りから始め、まつりを開催してきてくださった地元の皆様には感謝の気持ちでいっぱい」と話していた。
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