海老名むかしばなし 第29話 あの世への竹づえ【1】
明治もまさに終ろうとする前年(明治四十四年、一九一一)の七月二十六日、連日の豪雨続きのため村内の各道路は水浸しの状態で、中には濁水がごうごうと押し流しているところもあった。
ここ本郷に佐藤光義という有馬郵便局員がいた。彼は常に公務員たるべきものは住民サービスに徹しなければならないという固い信念を持っていた。彼の担当は集配事務で、豪雨といえども公務は一日たりとも欠くことはできない。
この日も例によって雨笠、雨ガッパに身を固め、危険箇所を探るための竹のつえを持って悪天候の中を配達に出かけた。出発後およそ三時間もたったと思うころ、雨はますます強さを増し、しのつくばかり。永池川はもとより相模川も堤防が決壊し、みるみるうちに田畑はドロ海と化した。佐藤青年はどうしたことか帰局の時刻が過ぎても姿を見せない。
関係者の心配はたいへんなものだった。村人たち総出で探しまわったが、行方がわからなかった。ポストがある家を順次尋ねもしたが依然不明。その日はとうとう探すのをあきらめざるをえなかった。 《次回に続く》
参考資料/海老名むかしばなし
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