著書がワシントン・ポスト紙の「今年の詩集ベスト5」に選ばれた詩人 城戸 朱理(しゅり)さん 市内在住 63歳
紡いだ言葉、国境越えて
○…2022年9月に刊行した英訳詩集『NAMES AND RIVERS』が米ワシントン・ポスト紙の「今年の詩集ベスト5」に選ばれた。収録したのは、自身の過去作から選び抜いた18篇。信頼できる友人で、過去作を何冊も読み込んだという遠藤朋之准教授が翻訳し、米国の実力ある詩人のフォレスト・ガンダー氏がブラッシュアップした。「2人の訳者の力を得て生まれた作品」と感謝を語る。
○…岩手県盛岡市出身。中学で読書に目覚め、高校3年で初めて詩を書いた。石川啄木や宮沢賢治の出身校ということもあり「詩が身近だった」。20歳で雑誌『ユリイカ』の年間最優秀投稿者になり、原稿料をもらっての「詩の仕事」が始まった。04年には、結婚を機に鎌倉へ転居。鎌倉の海辺に流れついたものをテーマにした『漂流物』も上梓した。「詩は意味だけでなく、言葉そのものが刻み込まれる。その直接性に打たれた」と魅力を語る。
○…鎌倉には高校の先輩の店があり、結婚前から頻繁に訪れていた。作家の藤沢周さんや柳美里さんらとの交流も深い。関心事はとことん調べる性格。仏教に酒、プロレス、最近は古墳をめぐる旅にも夫婦で出かけた。妻が「胃袋をつかまれた」という料理も、和洋中エスニックにフルコースまで振舞えるほどだ。
○…今作の出版では、日本との違いに驚かされた。「法律用語だらけの分厚い契約書を読んで、ウェブPR用の朗読動画を真夏の海で撮影し、詩集を読む時のBGMまで選びました」と笑う。そんな文化の異なる米国での評価は、大きな糧となった。「コロナ禍で自分自身は身動きが取れずとも、言葉や作品は国境を越えられた」。お気に入りの万年筆で、また新たな言葉を紡ぎ続ける。
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