6月25日から「紫陽花窯グループ展」を主宰する陶芸家 後藤 美枝子さん 橋戸在住 69歳
滲み出る心の温度
○…紫陽花(あじさい)の咲く頃、住宅街の一角が華やかなギャラリーに変わる。作品を手にし、「このお皿に何を盛り付けようって想像するのが楽しくて。食いしん坊なのね」とおちゃめに笑う。振る舞われる軽食や飲み物の器は全て作品で、使いながら陶芸の良さを味わえる。「横に長ーいお皿や可愛い取り皿とか、わぁって驚くものを作りたいの」。日常で楽しめる陶芸作品を届ける。
○…教室に通う生徒は約30人。千葉や愛知など「何で知ったんですか?」と思わず尋ねるほど遠方から通う人もいて、定期的に伊豆高原にも指導に赴く。「カリキュラムはあるけど、みんな聞かないのよ。だから『やりたいようにしなさい』って。失敗も新しい色合いも、自分でやった方が身になるしね」と苦笑しつつ、教室の時間は和やかに流れる。「土って大地のもので気を分けてくれる。帰る頃にはみんないい表情になるのよ」と表情が一段と和らいだ。
○…経営者の夫と結婚し子育て中だった30代の頃、趣味が高じて陶芸教室に通い、作品鑑賞に世界を巡った。美術展に出品したり、海外で講師に招かれたりと充実した日々を送っていた時、夫に若年性アルツハイマーの診断が。以後10年、介護と経営、制作を掛け持つ日々が続いた。「近所の人や生徒さんに正直に話して、よく助けてもらったわ」と苦悩の日々を今では大らかに振り返る。最期が近付くにつれ周囲に手を挙げることも多かった夫だったが「不思議よね。私の作品だけは、一個も壊さなかったの」。
○…生きがいは地域作業所での陶芸指導。「作業する人の純粋で輝く表情や、それを見て喜ぶお母さんの顔が好き。介護でお世話になった地域への恩返しね」。陶芸を通じ世界各国の人、障害や悩みを抱える人、様々な人たちに出会い、その数だけ驚きや喜び、衝撃のエピソードと出会ってきた。「本当に人が大好き。人生ってみんなドラマね」。作品に滲む温かさは、心の温度そのものだ。
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