全技連マイスターに認定された 中西 秀雄さん 佃野町在住 75歳
丹精込める洋服職人
○…全国技能士会連合会が、優れた技術を持ち、後進育成に熱心な技能士を認定する全技連マイスター。このほど、紳士服製造部門で認定を受けた。今年度は、全部門合わせても県内でわずか3人のみの栄誉に「素直に嬉しい」と顔をほころばせる。洋服仕立て業を60年続ける大ベテラン。「服を生かすも殺すも袖次第」と、袖つけには絶対的なこだわりと自信を持っている。
○…「好きでたまらない」という洋服業だが、当初は(株)日立製作所に就職予定だった。しかし、入社2日前になって、親のすすめで洋服職人の知人がいる鶴見へ。「すんなり受け入れた。都会へのあこがれがあったのだと思う」。茨城生まれの少年は、SL機関車に揺られ胸を躍らせていたという。「ほとんどが勉強」だった修業時代。「完璧な洋服はない。常に努力をしなければならない」と丹精込めて働き続け、数々の賞を受賞するまでに。「客に合った、いい洋服を作るだけ」と目を輝かせる職人は、1994年から10年間、神奈川服装クラブの会長を務めるなど、業界をリードしてきた。
○…大の動物好き。年中無休で働き続ける姿を、愛犬・シーズーの鈴ちゃんが見守る。「ペットは3代目。癒しだよ」とにっこり。事務所の机に乗せ、夫婦で愛情を注いでいる。鶴見で職人になるきっかけをくれた恩師もまだ現役。「その人がいたからやってこれた」。切磋琢磨し続け、まだまだ技術向上に励む。
○…後継者不足に悩むものづくり業界。洋服業も同様で、マイスターとして危機感を抱く。「若い人たちに興味を持ってもらわないと」と、インターンなどを通して自身のノウハウを伝えていく。「洋服に少しでも興味のある子に、まず針を持ってもらう。裾直しなどを経験して『なりたいなあ』と思わせられたら」。次世代の台頭を、自らの使命として胸に刻む。「天狗になっちゃいけない」。熟練のマイスターは、どこまでも謙虚にまい進する。
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