2回目の作品展を開いた「ちくちくの会」の代表を務める 齋藤 延美子さん 岸谷在住 66歳
ちりめんに願い込め
○…「くすんだシックな色合いがいいでしょ」。着物などの古布を材料に小物を縫い上げる「ちりめん細工」の教室を自宅で開催して約10年。2回目となる作品展を大盛況のうちに終えた。「手も動くし口も動くから脳の活性化につながる」と笑顔を見せる。会員25人分の素材を用意するため、夜なべで準備する毎日。それでも「支度してみんなを集めて何かするのが好きなの」と充実感を漂わせる。
○…小さなころから手芸が大好きだった。小学6年生のころ、祖母が入院した際は折り紙のひな人形を並べた手作りひな壇をお見舞いに贈った。「今でも大切」と自宅に飾ってある作品を懐かしそうに眺める。横浜信用金庫に9年勤め、専業主婦になってから友人を自宅に集めて小物づくりを企画するように。折り紙からリース作り、貼り絵など幅広い制作に勤しんだ。そんな折、友人と鎌倉で見たちりめん細工展に魅了された。「古布には色気がある。同じものをつくることができないから飽きない」。多趣味ながら「一番長続きしてる」と笑う。
○…19年前から神奈川区の地域作業所「りわーく」でボランティアを続けている。最愛の長男が脳腫瘍に侵され、19歳でこの世を去ったことがきっかけだった。「家にいると思い出してしまう。どこか違うところに行きたかった」。脳梗塞の後遺症が残る中途障害者と、布ぞうりをつくる日々。障害とひたむきに向き合う姿に「つらいのは私だけじゃない」と励まされ、再び前を向くように。平穏無事に過ごせるありがたみを噛みしめている。
○…江戸時代に生まれたちりめんは、子どもの安全を願う魔除けでもあった。「若い子は知らないから、作ってあげるとびっくりする」。孫のためにと制作に熱中する会員も多いという。3人の孫はいま、可愛さ真っ盛り。「ちりめん一つひとつに意味がある」。孫の健やかな成長を祈り、古布に思いを宿す。
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