2月27日に開校する「生見尾発見塾」の塾頭を務める 野澤 隆幸さん 生麦在住 86歳
朗らかな地域の語り部
○…生麦周辺住民らによる新たな試み「生見尾発見塾」の塾頭に就任した。「生麦は漁師町だった。漁師たちは一見豪快に見えるけれど、心遣いが細やかで優しくてね。生き物を扱う仕事だから常に感謝の気持ちを持っていたのでしょう」。地元で300年以上の歴史を持つ寺の長老であり、地域の語り部の一人だ。正泉寺で開かれる第1回目では、講師も務める。「今後は正泉寺の盆の風物詩になっている、金属製の盤を叩きながら念仏を唱える『双盤念仏』を見てもらう機会も作りたい」とアイデアも膨らませている。
○…3人兄弟の長男。僧侶の父の後を継ぐことは、青年時代から「受け入れていた」という。中学1年生の時には、頭を丸め僧侶になるための儀式である「得度式」を終えた。「そしたら学校で『野澤くんはお坊さんになります』と皆の前で紹介されて恥ずかしかった」と苦笑いする。戦時中は、東芝の工場へ動員され勤労動員を経験。足柄へ陣地構築に駆り出されることもあった。終戦後も、戦争の記憶は忘れられなかったという「当時の私と同じ中学生の孫に、戦争の頃の話をするようにしている」。住職時代は川崎大師へ勤務しながら正泉寺を守り、現在は、息子が後を継いだ。「頼もしい」存在と評価し、長老として優しくアドバイスを送っているという。
○…長年俳句や書道に親しみ、若きころはスポーツも万能で野球のピッチャーとして活躍したことも。中でも、クラシック音楽は愛してやまないという。「中学時代からレコードを集めたり、今も月2回はオーケストラの演奏会に行く。自分ではハーモニカぐらいしかできないけれど」と笑う。
○…核家族化が進み、世代間での地域の歴史の伝承は難しい時代になってきていると感じている。「郷土愛も薄れているのでは。その中で生見尾発見塾を開くことは意義深い」。伝承者の一人として、次の世代へ記憶を託す。
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