無料でラーメンを提供する「子ども食堂」で一人親家庭の小学生を応援する 原 賢美(かしみ)さん 馬場在住 56歳
苦楽ある人生、いじけずに
○…「物があふれる今の時代で、衝撃を受けたんです」。6人に1人の子どもが貧困だという日本の現実。孤食などを防ぐため、子ども食堂という取組があることを知り、代表を務める鶴見中央のラーメン店で実施を決めた。6歳で父を亡くし、母からもらったお金を手に、弟と二人で行った中華料理店。行き帰りの淋しかった記憶が甦った。「自分もして欲しくなかったから」。施しではなく、勇気を与えたい――それだけだ。
○…子安に生まれ、父の死後、母の仕事の関係で各地を転々と移り住んだ。昼夜働く母と顔を合わすのは朝だけ。淋しさは、「自分たちのためだから仕方ない」と押し殺した。「疲れた母親に心配かけまいと、優等生だった」とほほ笑む。それでも、周囲から漏れる『一人親だから』という声を聞くと淋しさが募った。「負けてたまるか。お金持ちになる」小学生で夢見たのは、自分の店を持つことだった。
○…高校卒業後、夢をかなえるため、住み込みのアルバイトをしながら、大阪の調理師学校に進学。資格を取り、京都の和食店に就職したがうまくいかなかった。だが夢は諦めず、まずはお金を貯めようと、バーテンダーやパブのキッチンなど、掛け持ちで必死に働いた。ラーメン店を開いたのは、そんなときに出会った一杯がきっかけだった。一日に数軒はしごするほど大好きだった食べ歩き。関内のラーメン店に魅了され、修行に。生麦の4坪8席の小さな店。初めて自分の城を持ったのは21年前だった。
○…「母親が一番苦労している」。面と向かって言うことはないと照れながら、感謝を口にする。健在の母と妻、2人の娘の5人暮らし。長女は成人し、次女ももうすぐ。最近は美味しいものを求め、妻と出歩く機会が増えた。ふとしたときに感じる幸せ。「人の人生、上がるときもあれば、下がるときもある」。夢をつかんだ手で作る一杯。伝えたいのは、「いじける必要なんてない」という気持ちだ。
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