熱海市が10月末から野生のサル「テツコ」を探している。首には紫色の発信機がついており、湯河原・千歳川以西の群れの動きを知らせる役目があった。市によると電池が切れかかっている可能性があり、前足にイノシシ用の罠が絡んでいるという。
「最悪の群れ」を発信
湯河原町と熱海市は情報交換しながら群れの動きを追っており、テツコがいる「P1群」は5〜6頭のグループで熱海港から千歳川付近を動いている事が分かっている。神奈川県による「加害レベル」のランク付けでは神奈川でも最高の「4〜5」で、農地だけでなく民家や商店に入って物を盗んだり、追い払ってもすぐに戻ってくる「最悪の群れ」(行政関係者)だった。そのためテツコからの発信は貴重な情報源でもあった。
しかし最近は電池が切れかかっているのか地理的な状況なのか「発信が途絶えがちになっている」(熱海市)という。前足にはイノシシ用のくくり罠と思われるワイヤーが絡んでいることが分かり、市ではこれらを外すため、専門業者に依頼して捜索を始めた。
テツコら「P1群」はまだ少数で、湯河原を拠点にしている「T1群」の34頭の方が圧倒的だ。こちらも人家進入などの被害を出し、依然として町内への出没が確認されている。町では猟友会メンバーの「追い払い隊」とともに定期的に爆音などで威嚇。また通報から駆け付けまでの間に群れが動くため、町民には爆竹を配布している。
落下ミカンなど餌に
湯河原も熱海でも果樹園など農家が多く、下に落ちた実などは格好の餌だ。行政側は早期収穫や野菜くずを埋めるなどの対策を奨励しているが、農家も高齢化で対応しきれない側面もある。高齢化は人間だけでなく、T1やP1の群れも同様だ。テツコも人間でいえば80歳ほどのお婆ちゃん。群れの中では長老格なのか、伊豆山などで毛づくろいを受けている様子も確認されている。