箱根・湯河原・真鶴版 掲載号:2017年9月8日号
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素晴らしき幕の世界

文化

 路線バスの行先表示が、いつの間にかどれもLEDの電光掲示板に――時代の流れと言えばそれまでだが、取り外された「方向幕」を求め歩くコレクターたちがいる。今月2日に箱根登山バスと伊豆箱根バスが宮城野で開催した部品販売会でファンに話を聞いた。

数百巻コレクションする人も

 「結構な数の路線が巻かれていますよ」。ファンの間ではレア物とも言われる伊豆箱根バスの方向幕を購入したのは、都内の会社員・荒井聡さん(48)。フィルム状の幕を広げてもらうと「箱根循環」や「芦ノ湯フラワーセンター」など、今は存在しない路線や施設名が続々と現れた。こうした懐かしさ、儚さにファンは惹かれるらしい。藤沢から来た若者(20)は自宅に数十巻を保管し、電動で動かす装置で鑑賞する。「家の近くを沢山のバスが走り、バスが身近な存在だったんです」。そんなささやかな理由で集め始めたという。登山バスの社員は感心したように「君は…運転手になるべきだ」。

 この日は1ロールあたり6〜7千円程度で販売されたが、県内を走る神奈川中央交通の幕は10年ほど前に放出が終了し、ネット上では数万円で取引されることも。そのため幕ファンはバスの営業所の新築や移転といった情報も見逃さない。車庫の片づけでお宝が見つかり、イベントで放出される可能性もあるのだ。これまで460本の幕を集めたという斎藤弘伸さん(57)は「前後の方向幕よりも経由地の地名が入る車体横の幕が人気では」と話す。上には上がいて、首都圏のファンの中には約2千本を集めた猛者もいるらしい。さらに幕の世界はバスだけでなく鉄道にも存在し撮影だけを好む層もいる。なぜなら、幕は一本ずつが重く、コレクションが増え過ぎると家の床が抜けてしまうからだ。取材しながら気が遠くなった。

 「昔は手動のハンドルで幕を巻いたんですよ。よく終点近くの信号待ちの時に巻いたなぁ」。ファンを嬉しそうに見守る田中英章さん(59)は、登山バスの運転手として40年近く走ったベテランだ。もうすぐ定年。方向幕は人々の思い出を焼き付けたフイルムでもある。

ホイールカバーからバス停なども販売
ホイールカバーからバス停なども販売

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