理容師が見た被災地 〜「何かしたい」と「何ができるか」の狭間で
震災から約ひと月が経過した先月18日。区内百合丘で理容店を営む笠原隆さんは母の故郷でもある気仙沼市本吉町に向かい車を走らせていた。
現地で旅館を営む親戚を見舞うほかに、笠原さんには大事な目的があった。現地の理容師たちにハサミを届け、出来ることなら自らも被災者に散髪をしたいと考えていた。
「もし何かしたいと思うなら、髪を切りにいくといい。とても喜ばれると思う」―。すでに現地に飛んでいたボランティア仲間が発した言葉が、背中を押してくれた。理容師仲間に呼びかけ、ハサミやくし、椅子などを集め、北へ向かった。
気仙沼市の中でも比較的高台にある本吉町は津波の爪跡を残すものの、いくつかの建物を確認することができた。40人ほどが身を寄せる避難所の廊下で、やっとの思いで3人の髪を切った。散髪の間中、何度「ありがとう」と声をかけられたかわからない。聞けば平日は皆ガレキ撤去の作業で忙しく、散髪のニーズは土日のほうが高いのだという。「理容師は土日が最も忙しい。本当は土日に行けたらニーズに合うのだろうけれど」。一抹のもどかしさを感じつつ、避難所をあとにした。
復興への一歩を力強く踏み出そうというエネルギーの傍らで、喪失感や不安感を抱えている人の存在も、しっかりと心に刻まれた。見晴らしの良い場所でつい海側に散髪用の椅子を設置した時のこと。「海見たくねえ」。力なげにつぶやかれたその一言は、笠原さんにとって忘れられないものとなった。
笠原さんは話す。「外から見る被災地と実際の被災地は必ずしも一致しない。だからこそ、してあげたいの気持ちの前に、本当に彼らが求めているものは何か、こちら側が慎重に思いをめぐらす必要があると感じた。これから先の支援は、できるだけ無駄がなく、ニーズにマッチし、継続していけるものでなくてはならないのかもしれない」
百合丘での日常に戻った笠原さんは、「自分なりの支援」について以前よりも真剣に考えるようになったという。「被災地では、朝と夜におにぎり一個ずつ、という生活を送っている人たちが僕らに多くの差し入れをしてくれる。そういう彼らの力になるために、自分に何ができるか、しっかりと見極めたい」
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