県相模川左岸土地改良区の理事長を務める 赤井 光夫さん 大谷北在住 80歳
伝統受け継ぎ次世代へ
○…80歳とは思えないほどの姿勢の良さで作業着と首のタオルが良く似合う。一番目についたのは、グローブのような大きな手。平は白く、甲は真っ黒の分厚い手は毎日陽を浴びながら作業をしている風景が浮かぶ様。地元小学生の授業では田植えの指導にあたり、声を上げる姿が勇ましい。「作物は嘘つかねぇからな。真面目にやれば、上手く育つし、適当にやればそれなりのもんなんだよなぁ。良く言うんだけど、毎日が違う米作りはドラマと同じ。おっかなびっくりしてるけど、子ども達には例え1時間でもそういう経験に触れてもらえれば」
○…相模原から茅ヶ崎までの相模川流域の水田に水を配る用水路を管理する「県相模川左岸土地改良区」の理事長。水田に水を配ることは農地を米や野菜などの生産の場だけでなく、生物の暮らしの場の提供や温暖化の緩和などさまざまな効果を担っている。「昔は田んぼに水を引くのも一苦労で、水路も先人達が作り守り継いできたもの。大切にしなきゃいけねぇ」と田んぼを見渡す。
○…「おれが子どもの頃は食糧難でよぉ」と話し始め、戦時中からの思い出は「B29が空を飛びまくってたよ。500機までは数えたりもしたんだけどな」と感慨深い表情を浮かべる。米、麦、味噌、しょうゆなど庭先販売をすれば都内からも買いにくるような時代で、食の重要性は目に焼き付けてきた。「歴史は将来の鏡。昔のことを忘れずに、発展を考えていかなきゃいけねぇな」
○…朝夕も田んぼは散歩道としても活用されている。しかしながら、後継者問題の課題に加えて、市内でも宅地開発により都市化が進んでいる現状を受けて「太古の人みてぇなんて笑われちめぇかもしんねぇけど、田んぼや畑の風景が見られないのは心配になっちまうよ。おれには”緑の風”が心を和らげるんだ」。小学生達のはしゃぐ声が風に乗って流れてくる。
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