箱根ばやしの“バチ” 託す
保存会長交代
湖水祭、鳥居焼まつり―毎年芦ノ湖畔の夏まつりを盛り上げる「箱根ばやし」。このお囃子を指導してきた「保存会」の会長が、このほど野崎茂則さん(70)から志村裕之さん(53)へと引き継がれた。
箱根ばやしのルーツは天正年間にさかのぼり、湖で米を洗う神事で演奏されたとされる。「昭和初期の元箱根では祭りの度に山車が繰り出して盛り上がっていました。太鼓の音色は欠かせない存在だった」(野崎さん)。昔ながらのリズムを復活させ、子ども囃子を結成する気運が盛り上がったのは昭和42年ごろ。当時こども会連合会会長だった中島昇さん(89)は地域の年配者などを訪ね、地元に伝わるお囃子リズムを集約。しかし江戸時代の神事を盛り上げただろうリズムは既に消滅していたという。それでも子ども囃子は結成しようと、小田原から専門家を招いて指導を開始。大人たちは半纏を購入して子どもに着せ、地元医師の計らいで太鼓も寄贈された。
子ども囃子は小学生限定だったが、昭和50年代に入ると中学進学後も熱心に続ける子が増えた。そんな若者に感銘を受けた野崎さんは「ずっと同じリズムばかりでは飽きてしまう」と他団体の大鼓のレコードを彼らに聴かせ、オリジナル曲を作って与えた。迫力の音色は絶賛の的となり、若者たちのグループはいつしか「九頭龍太鼓」として命名された。九頭龍OBは「白龍」として独立するなど新しい盛り上がりも見せている。毎年七夕になると地元の小学3〜6年生を集めての指導が始まる。20日間で5パターンのリズムを習得する短期集中型。決して楽ではないものの練習を投げ出す子は皆無だという。