白い壁にびっしり描かれた人やビル、動物たち。思わず引き込まれる壁画の作者は、湯河原町福浦出身の高橋信雅さん(42)。世界はこんなに面白いと言わんばかりに、下書きもなくペンを走らせる。これまで手掛けた作品は広告や自販機の外装、CDジャケットと化し、作品は北原ミュージアム(河口湖)などで観る事ができる。
坂が多く、段々畑のような土地に家々が肩を寄せ合う福浦。高橋さんの作品にはどこか故郷の風景に通じるものがある。福浦小学校時代から絵は描いていたが、絵画展ともなれば木材に描いて作った「地獄絵図」を提出。竹林に生える竹を曲げて縛り「恐竜」を作るなど小さな頃から芸術家肌だったらしい。「自然の中で育ったのは貴重な経験です。微妙な味、色の差などに気付けるようになりました」。デザイン学校に通っていた20年ほど前にフリーランスで活動を開始。今は製作のため東京と地方、海外を行ったり来たり。
5月5日には二子玉川の商業施設で「みんなで笑顔の世界を作ろう」をテーマに、子どもたちとと巨大イラストを完成させるイベントに加わった。大きな白いキャンバスを前に、高橋さんが手にしたのは真っ白いペン。子どもたちが壁に笑顔を描くうちに、その下地にもうっすらと笑顔が描かれているのに気づく仕掛け。驚く顔が嬉しくてたまらない。敷居の高い芸術家ではなく、エンターテイナーだ。