箱根・湯河原・真鶴版
公開:2015年7月10日
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箱根町小涌谷にある鈴木氷店が夏の繁忙期に入り始め、作業場から爽やかな音が響いている。店主の鈴木勇さん(61)は観光地箱根で唯一となった氷店の2代目。先代の故・義一さんは猟師で、狩りがひと段落する夏の仕事として始めた店だ。当時はまだ電気冷蔵庫の普及以前で、裕福な家庭に保冷用の氷塊を宅配していたという。氷は伊東市で製造されたものを小田原経由で取り寄せて加工。澄んだブロックは歴史あるホテルや旅館に届けられ、美しいオードブルに敷かれたりグラスの中で音を奏でる。時には彫刻用の大型サイズの注文も。そしてこれからの夏祭りシーズンと言えば、かき氷。「今夏は大涌谷の影響がどう出るか。アイスを売るコンビニが増えたけれど、箱根の氷屋はここだけ。やめる訳にはいかないね」。握るノコギリは何十年と使い込んだ相棒。錆一つない歯を愛おしそうに見つめた。