「抱える悩みは同じ」
箱根の湯本富士屋ホテルで今月2〜4日、初の「火山観光サミット」が開かれ温泉関係者や研究者などが火山と生きる知恵を出し合った。3日間でのべ700人ほどが集まった。
山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は国内の火山活動について「今後数十年以内に大きな噴火が複数回発生することを想定すべき」とし、観光客の安全確保や正しい情報伝達を検討することを促した。
有珠山噴火を経験した洞爺湖からは火山マイスターネットワークの川南恵美子副代表が来場。被災遺構を残して防災教育などに活用する洞爺湖の取り組みや、火山との共生を積極的に打ち出す姿勢を紹介した。
東海大の大場武教授は大涌谷の火山ガスについてこれまでの調査の経緯を発表。現地では二酸化硫黄(SO2)の濃度が依然高く、「観光客を招きいれる状況にない」現状を報告し、定期的な調査や安全基準の設定、避難体制の確立などを提言した。
サミットでは一連の発表や提言をもとに山口昇士町長が「箱根宣言」を発表。人的・経済的リスク回避や観測体制充実、正しい情報発信などが「温泉地の課題を乗り越えるモデルである」と打ち出し、幕を閉じた。
登壇者のひとり、草津温泉湯の華会(女将の会)の小林由美さんは「温泉地が抱える悩みは同じだと思う。温泉は火山の賜物だが、その存在が当たり前になっていた。改めて火山のなりたちを学び、子供たちにも伝えたい」と話していた。