第15回湯河原文学賞小説の部の表彰式が3月24日に行われ、最優秀作「続相州霊異記」を書いた藤原圭太さん(40歳・岩手県盛岡市)が、最終選考に加わった湯河原在住の作家・西村京太郎さんと対面した。
122編の応募作から選ばれた作品は平家滅亡から3年後の土肥郷(湯河原)などが舞台。土肥実平ゆかりの武将のほか岩手県ゆかりの源義経や中尊寺の僧などが登場する。西村さんは「不可解な連続殺人の謎で始まり、歴史上の人物が絡んで面白い」と称えた。
藤原さんは塾で歴史を教えた経験があり「湯河原と岩手をつなぐ作品が書きたい」と、書籍やネットなどで湯河原の情報を集め1カ月で受賞作を書き上げたという。「原稿80枚分の時代考証が大変でした。実平公にお礼参りしたい」と緊張した顔をゆるませた。
藤原さんには賞金50万円が贈られ、受賞作は5月22日発売の『小説NON』6月号に掲載される。
【あらすじ】
相模国土肥郷の領主、土肥実平の嫡男遠平の家臣である加藤景親は、笠懸の酒宴に招かれ、その帰り道で何者かに首を刎ねられ殺された。相模一帯では最近、御家人が斬り殺される事件が起きている。文治四年、源頼朝に屈した後白河院が源義経追捕の院宣を下した。土肥実平から家臣榊康久に声がかかったのは、そんな張りつめた空気が流れている時だった。実平より事件の真相を明らかにするよう命を受けた康久は、郎党の霧丸と茜、また土肥の温泉に立ち寄る山伏の由利中八、鏡戒とともに事件を追う。