湯本駅近くの「ほたる公園」で今年もゲンジボタルが舞い始めた。夜になると早川隣の水路で呼吸をするように緑色の光が明滅し、散歩する観光客が驚きの声をあげていた。
長年公園を世話しているのが、地元のほたる愛護会だ。定期的な水辺掃除などは虫よけスプレーが使えず、体中蚊にさされるのは覚悟の上。メンバーのひとり、米山雄二郎さん(44)は、日大の生物資源科学部で学んだ知識などを生かし、地元のホタルを復活させるべく同会の技術普及員を務めている。「ホタルは光りながら飛ぶ姿が注目されますがそれだけじゃない。餌を捕って、干からびず、クモや鳥などにも食べられず…幼虫の頃から幾多の試練を乗り越えているんですよ」。
いま課題になっているのは水路を荒らすイノシシだ。石の裏にいるミミズを探しているらしく、水路の水を流出させ、メンバーが急いで修復した事もある。
こうした状況もあり、米山さんは経営する湯本の旅館の敷地にホタル用水路を作った。水底にはホタルの幼虫が食べるカワニナの稚貝もあり、幼虫がサナギになる土手もある。公園での「万が一」を考えた方策だった。「ホタルを見た子供たちの喜びようは半端じゃない。やってて良かったと思います」。今年はイノシシの件もあり多くの飛翔は見込めないが、今年も6月上旬に見頃を迎えそうだ。