小田原労働基準監督署が、県西の旅館業者に対して「自主点検票」と題した異例のアンケートを行い、今月17日に結果を発表した。長時間労働などを事業者自身にチェックしてもらうのが狙いで、約10年ぶり。
労基署が管轄する2市8町の446施設に対して送付したところ、約6割の施設が回答。うち労基法が定める時間外労働・休日労働に関する協定(通称36協定)の未締結や未届け、協定の限度超えが31施設あり、定期的な健康診断をしていない施設も32ヵ所、さらに労働条件を書面で通知していないケース(16施設)も判明。労基法、最低賃金法、労働安全衛生法について何らかの問題があると回答した事業所は全回答の42%にのぼった。こうした結果をうけ、労基署では「講習会などを通じて啓発する」とし、箱根・湯河原・真鶴の各旅館組合にも法令の周知徹底を求めた。
県西の宿泊施設の大部分を占める箱根では、大涌谷の火山活動の影響から回復基調にある一方、以前よりも人材確保が難しくなりつつあり、残業の一因になっているという声もある。労基法は長時間労働のブレーキ役だが、宿泊業は少人数や家族経営の施設もあり、機能しているかどうかは不透明だ。小田原労基署の監督官は計4人で、チェック能力には限りがあるものの、署には実名の相談や匿名の手紙などが寄せられる事もあるという。