箱根・湯河原・真鶴版 掲載号:2018年6月8日号
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こつこつ20頭分以上 手がかりは胃袋の中に 仙石原の獣医師・柏木聰さん

文化

 仙石原野生鳥獣クリニックで、今月上旬から獣医師の柏木聰さん(71)が手作業で緑色のかたまりから種や葉、茎の破片などを探している。茶葉のようにも見える緑色のものは、シカの胃袋から取り出した内容物を一晩水でさらして洗い出したものだ。軟らかい繊維はもう溶けてしまっているが、判別できそうな物も出てくる。最初は「身近な野生動物が何を食べているのか」という好奇心から調べ始めたものだった。

 箱根や小田原ではシカの数が増え、植生への影響が懸念されている。仙石原の湿原にもシカよけの金属フェンスが設置され始めたばかり。所属しているNPOの小田原山盛の会では野山を歩いてシカが食べた跡などを調査しているが、柏木さんが調べた情報を付け合せれば、シカの食生活や生息規模などを知る手がかりがいっそう鮮明になる。柏木さんは3年ほど前から小田原の猟師と協力して、久野などで捕獲されたシカや事故で死んだシカの胃袋をバケツで持ち帰り、約20頭分の胃袋を調べ続けてきた。植物の種類も多岐にわたるため、時には生命の星地球博物館の学芸員に判別を仰ぐ事もあった。調べるうちに常緑広葉樹のアオキが通年で食べられていることが分かった。どうやらアオキは好物らしい。キウイやミカンの皮や梅の実も出てきた。柏木さんの今後の目標は淡々と「もっと多く調べ(現地での食痕調査の)精度を上げること」。データを積み重ねる、基本に徹している。ただし作業は楽ではない。冷凍庫から「嗅いでみる?」と柏木さんが差し出したのは、洗う前の内容物からとったサンプル。鼻を近づけた瞬間、気が遠くなった。

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