「梅の宴」会場を沸かせた相洋高校の和太鼓部員 力石 早稀さん 湯河原町在住 17歳
努力の証は両手の中に
〇…眠たげな、一分咲きの梅林を叩き起こす怒涛。香りを音にしたような篠笛(しのぶえ)。聴き入っていた観客は我に返って拍手を送った。地元湯河原での公演は友人や家族に成果を見せる数少ないチャンス。演奏中は一変、別人のような横顔を見せていた。所属する相洋高校和太鼓部は昨年、全国高等学校総合文化祭で文化庁長官賞を受賞。相洋は高校生和太鼓のトップにいた。先輩たちの偉業と、連覇のプレッシャーは5か月後の全国大会が近づくにつれて一層のしかかることだろう。チャンスは1度きり。大会後の9月には引退が待っている。
〇…保育園の頃にピアノを始め、小中学校時代は音楽会になると伴奏役に選ばれていた。「バックナンバー。ザ・バースデー。ラッドウィンプス…」いったい何語かと聞けば、好きなバンドの名前だという。高校1年でロックの道か、和太鼓かという分岐点に立った。先輩たちの演奏に肩を押されて、掴んだのは太鼓のバチ。新人訓練では、膝を直角に曲げながら腰を落とす正しい構えを叩き込まれた。脚の震えを抑えながらバチを降ろす相手は古タイヤ。入部しても数か月は太鼓に触らせてもらえない。40人はいた仲間は一人減り、二人減り、そして精鋭チームの一人として残った。
〇…「努力しても結果を出さなければ。認められなければいけない。観客が笑顔にならなければ、努力が足りないということです」。観客と向き合う側にいると満足の度合いが表情で読み取れてしまうのだろう。先輩と比べられることも。悔しくてバチを握って両手はマメだらけ。それが潰れ続け、所どころ牛皮のように固くなっている。
〇…バレンタイン前日はチョコを数十個も手作りしたとか。クッキーも焼いて部員全員にプレゼント。これが名門の女子部員に受け継がれる伝統らしい。完成した時刻を聞くと「深夜1時…」とぽつり。硬派な横顔に、やっと笑窪が入った。
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