すりばち森にふく風がそっとせなかをおしてくれたよ――。幼年童話『うさぎとハリネズミ きょうもいいひ』(石川えりこ絵/ひだまり舎)で昨年、第55回日本児童文学者協会新人賞を受賞した西生田在住の作家・はらまさかずさん(50)。11月には『きっとあえる』と題した続編も刊行した。物語の舞台となっているくぼんだ地形の「すりばち森」は、多摩丘陵の景色から着想を得たという。
「家から見える地形がちょうどすり鉢状」。愛知県から大学で上京し、多摩区に住んで20年ほど。漫画家・藤子不二雄や小説家・庄野潤三らが暮らしたこの地に憧れがあった。「日本女子大の周りの森や杉山神社、都会に近いのに自然豊かな場所」。すりばち森に流れる「とんとん川」のモチーフは五反田川だ。「いろんな作家が考えたことがこの地域の空気に流れている。物語を読んで多摩区の風を感じてもらいたい」と胸中を語る。
小5で読んだ『ズッコケ3人組』や高校で出合った『きつねの窓』に魅せられ、編集者の傍ら物語を書き続ける。多摩区に住み始めたころから10年近くウサギを飼っていたこともあり、今作に至るまで何百話も多様な性格の「うさぎ」を書いてきた。言葉と挿絵で物語を紡ぐ「幼年童話」は、「文字だけよりも生きている感じがする」という。大切にするのは、言葉選びや声に出したときの音。「子どもにもわかるような言葉で、できるだけ積極的な言葉を使いたい」。新しいストーリーに思いを巡らす。
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