戦時中に作られたとみられる防空壕を活用したキクラゲの栽培が区内栗木で行われている。生産者の小山仁美さん(51)=栗木在住=は「過去にあった戦争のことを食卓で話すきっかけにしてもらえたら」と思いを込める。
区内で建設会社を営む小山さんは6年前、栗木にある山林を購入。近隣住民からかつて山に防空壕があったことを聞かされ、探してみると斜面に横穴を見つけた。ほぼ土で埋まった入口から中に進むと奥行きのある空間が残っていたという。
小山さんが文献を調べていくと1944年8月、川崎区にあった大島国民学校に通う当時の4、5年生女子児童39人が山林に近い常念寺に疎開していたことが判明。旧日本軍が児童らの避難用に掘った可能性があることも分かったという。
防空壕は崩落の可能性もあり「危険なので埋め戻すのが一般的ですが、せっかく陽の目を見たものなので残した方が良いと思った」と小山さん。入り口部分を鉄筋で、奥の空間は当時の凹凸が分かるようにコンクリートでそれぞれ補強し、高さと幅約2〜3メートル、奥行き約13メートルの空間となった。
当初は資料として保存していたが、農家のアドバイスを受け2年ほど前に送風や加湿といった設備を導入し、シイタケの栽培を開始。より効率的に収穫できるということで1年半前からキクラゲ栽培に切り替えた。
現在この場所では月200キログラムほどが収穫され、「防空壕きくらげ」としてJA直売所のセレサモス麻生店と宮前店のほか、横浜や相模原の直売施設で販売されている。小山さんは「戦争のことを伝える機会が少なくなってきている。商品名としてはマイナスの印象もあると思いますが、多くの人に当時のことを学ぶ機会になって欲しい」と話している。
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