黒川在住の立川幸宏さんがセレサ川崎農業協同組合の青壮年部委員長に今年4月、就任。市内9ブロック、部員183人をまとめる。41歳。委員長として話を聞いた。
先祖代々の農業を継ぐ。現在は父親と弟の3人で作業し、繁忙期は母親、妻も手伝う。「農業を衰退傾向にしたくない」という思いが強い。「若い後継者が少ないのも事実。それは農業に魅力がないから。どうすれば、『農業をしたい』という人を増やせるか」。大学で農業を専攻し、就職は農協へ。32歳で実家に戻った。家を継ごうと考えていたが、外の世界も体験したかった。
祖父の代からハウス栽培を取り入れ、出荷時期を旬とずらすなどして商品に付加価値をつけてきた。昨年には県内で初という最新型のハウスを設置。長期多段どりという農法で約10カ月にわたり、ひと苗から23段分のトマトを収穫する。トマトは下から一段一段実がなり、多い時には1日で350kgを出荷する。気化熱を利用してハウス内の温度を調整して、収量、品質を管理し、収益の安定化を図る。「経営がしっかりしていれば、農業への取組みもしっかりできる。やらされている仕事ではなく、自分から考えて挑戦できるようになれば、魅力のある職業になるのでは」
コロナ禍のため、農業の世界も一変した。「飲食店や学校給食向けに出荷していた農家は、販路が閉ざされた。直売所や庭先での販売に切り替えた人もいるが、本当に大変だったと思う」。青壮年部のネットワークを生かして販路を確保した農家もあったという。コロナ禍を受けて、「今まで手に取ってくれなかった人が野菜を購入してくれた」と感じる。地場産の野菜に対して、多くの人が興味を示した。自宅の庭先での販売も多くの人が訪れ、購入だけでなく、いろいろな情報も寄せられた。「食べてくださるお客さんの声はなかなか聞けないから。そういった声を商品に反映できれば」と消費者との距離が縮まったと感じる。
近年、多くのエリアで地元の市民団体と協力して農や食に関するイベントが増えてきた。そういった流れがこのコロナ禍でさらに進んでいくと考える。「せっかく興味を持ってもらえたので、流れを絶やさないようにしたい」。ただ、感染防止のために部員同士の会議などができない状態が続いている。「本当は『こんな成功例があるよ』『市民の人と一緒にイベントを企画中』といった声をもっと集めて発信しなければいけないんだけど。まだそういう環境ができていない。情報をみんなで共有して、より魅力のある農業を実現させたい」と意気込む。
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