色鮮やかな、複数の糸を幾重にも巻いて作られる「手まり」。千代ヶ丘在住の女性(68)の母親が制作した手まりを、インドの高齢者や子どもたちに見てもらおうと先月、田中崇さん(89)=高石在住=がインド大使館に届けた。「母親の手まりが海を越えることになるなんて、うれしいです」と女性は喜んでいる。
田中さんは、かつて大手印刷会社、出版社に勤め、印刷技術を習得し、編集などに携わっていた。定年後、専門学校の講師を務めると同時に、印刷・出版の専門家として、JICA(国際協力機構)、JETRO(日本貿易振興機構)、JODC(海外貿易開発協会=現・海外産業人材育成協会)に登録。日本政府が開発途上国に資金や技術協力を行うODA(政府開発援助)の指導員として、15年間、世界各国を飛び回っていた。
そのひとつが、インドの大手マスコミグループだった。派遣期間が終わった後、同社から直接雇用の依頼があり快諾。東京支局に所属し、現在も毎年、インドで指導にあたっている。
記事がきっかけ
田中さんが「手まり」のことを知ったのは、タウンニュースの記事「亡き母の『手まり』希望者に」(昨年9月24日号)だった。千代ヶ丘在住の女性の母親が趣味で制作していたが、一昨年10月に他界。自宅に残された大小約70個の手まりを「大切にしてもらえる方がいたら差し上げたい」という記事を読んだ。「インドの会社は高齢者施設も運営しているし、現地の高齢者や子どもたちも見たら喜ぶと思って」と田中さん。
そこで、窓口となった高石地域包括支援センターを訪れ、手まり30個を譲ってもらった。コロナ下で渡航ができなかったため、インドの会社への郵送を試みるも、コロナの影響で受け付けてもらえなかった。
「インド企業の従業員だから大使館なら話はできるし、間違いなく届けてくれると思った」と先月、インド大使館に交渉へ。大使館の職員も手まりに興味を持ち、快諾してくれたという。「まだどこに送ったかはわからない。近々聞いてみようと思う。インドの人たちに日本の文化を知ってらもらえれば」と声を弾ませる。
母親の制作した手まりがインドに渡ることを聞いた女性は「まさかこういう展開になると思っていなかったので、うれしい。インドで大切にしてもらえたら」と喜んだ。
麻生区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|