連載88 「市民の財産」美術品の管理は適正に みらい川崎市議会議員団 こば りか子
本市では、令和元年東日本台風で甚大な被害を受けた市民ミュージアムや、岡本太郎美術館以外でも、区役所や市民館など身近な施設で美術品を収蔵しています。調査した結果、麻生区の13点をはじめ、各区が収蔵する美術品は合計で81点あり、評価額は計約1億7千万円であることが分かりました。さらに、本庁が管理する評価額100万円以上の美術品は72点あり、合計で約4億1千万円とのことですが、評価額が800万円のものも含め、6点が保険に未加入であることも分かりました。
ずさんな管理体制
また、全ての市有財産が記載された管理台帳で美術品の項目を見ると、必須と思われる「作品名」「作者名」「寄贈者」「サイズ」などが未記載のものも多く、いずれも写真と共に管理されていません。台帳に「管理者」として記載されている責任者に問い合わせると、「書類上で引き継いだだけであり、どのような作品か分からない」という信じられない回答が多く、無責任な実状も明らかになりました。市民ミュージアムの作品が水没し、甚大な被害を被った際、私の元には「川崎市は、美術品や寄贈者に対する尊敬の念が全く感じられない。それは、作品を作品ではなく、モノとしてしか思っていないからだ!」という憤りの声を多くいただきました。市民の共有財産である美術品を確実に後世に引き継ぐことは、現職の責務と考えます。
このように、現在の管理体制が、ずさんであることを明らかにしたうえで、管理方法について「写真と共に記載する」ことをはじめ、責任を一元化し、適切な展示をするための「学芸員の配置」など改善を求めました。すると、既存のものを改めて調査し、保険未加入の作品は早急に加入手続きを行い、また、学芸員の知見の活用についても検討すると副市長が表明したので、引き続き注視してまいります。
各区の周年記念に公開・見学ツール作成を
今回の調査で、本市には、様々な作品が各区や市役所内に収蔵されていることが分かりました。私自身、麻生区役所や市民館にあるとされながら見たことがない作品も台帳に記載されていたため、作品名と写真、作者のプロフィールや展示場所などを記載した冊子を発行し、各区の周年記念に市民が作品を見学できるようなツールとして活用することを求めました。ところが、市民への公開については、著作権などの課題もあるため、適切な手法について検討するとの答弁でした。しかし、寄贈者は、市民に広く鑑賞して貰うことを願い、市に寄贈していることは明らかであり、そもそも、それらを適切に管理していなかった市が、あえて答弁で著作権を語ることに違和感があります。
市民共有財産の美術品、誰が、何の権限で処分した?
また、今回調査するなかで、さらなる“謎”が発覚しました。
市長は、「庁舎内の絵画など美術品は、貴重な市の財産として認識している」と答弁されていますが、秘書課が所蔵するリストを見ると、平成28年8月に「不用処分のため」として、10点の絵画と木版画等、評価額合計152万円分が「廃棄」されていることが明らかになり、責任者として記載されていた当時の課長に確認したところ「記憶にない」という答えでした。市民ミュージアムの水没した作品も廃棄については慎重な対応を行っていますが、秘書課で廃棄された作品は、それらに比べ、どれほどの状態で廃棄の判断がなされたのか、課長は誰の指示で、何を基準に、どのような権限を行使し、廃棄したのか。寄贈された作品を、単にゴミとして捨てたのか、廃棄といいつつ誰かが持ち帰ったのか、もしくはオークション等で利益を得て手放したのか謎が深まるばかりです。市が所有する美術品は、市民共有の財産であり、市は、あくまでも、それらを預かって管理しているだけだということを再認識し、秘書課が処分した10点の作品について詳細を調査し議会に報告することを求めていますので、また改めて報告します。
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