この夏、部分開放が叶った大涌谷。観光施設の賑わいは回復基調だが、黒たまご茶屋に続く自然研究路は閉鎖が続く。変化しやすいガス濃度や新しい避難マニュアルなどのハードルもあり、再開のめどは立っていない。
黒たまご販売・温泉造成噴火前の7〜8割に回復
箱根ロープウェイによると大涌谷駅の賑わいは「一昨年とほぼ同様」になり休日は構内に行列もできている。園地駐車場は大型バス用を一部普通車用に変えたこともあり、8月の利用は約3万2千台と一昨年比で3千台ほど増えた。噴気地帯では温泉造成施設(52号蒸気井)の修理が終わり、造成量は以前の7割程度に。黒たまごを作る奥箱根観光によると販売数は7〜8割ほどになり、製造が追いつかない日もあるという。
町は再開にあたりガス監視員などを配置、避難訓練を行うなど対策を立てた。さらに年度末にかけてガス情報を広報する大型ディスプレイを、別荘地や早雲山駅、姥子駅にはガス計測器を新設する。再開以降、ガス濃度は屋内避難基準を超えた日は一度もないという。
大涌谷観光の主要エリアが再開するなか、黒卵の蒸し場に向かう自然研究路はいまだ閉鎖が続いている。ここは元々約600mの回遊路で14年ほど前に土砂崩れで一部が崩壊したが、噴火前まで復路の300mの散策が可能だった。
県は壊れた残り半分の修復工事も検討しているが、園地関係者の間では「研究路が元に戻っても再開は難しいのでは」という声もある。昨年の噴火前まで、現地では現在よりハードルの低いガス基準(対応マニュアル)を使っていた。しかし研究路は駐車場に比べガス濃度が高いとされ、ここ数年観測機器が精度も上がり、噴火前とは状況が変わりつつある。今後、研究路で適用されるのは今年導入された新しい避難誘導マニュアルだ。濃度基準は瞬間値を適用し、再開しても頻繁に立ち入り禁止になる可能性が高い。往復30分の散策路での避難誘導は簡単ではなく、近くに退避施設はない。
再開に向けた流れは、行政や事業者、学識者などによる防災協議会や専門部会での検討が欠かせないが町によると同会の開催予定は今のところないという。
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