梅の宴に合わせて「湯河原の自然・花の写真展」を開いた観光ガイド 小石川 保さん 湯河原町鍛冶屋在住 74歳
幕山の達人
○…ハイカーやロッククライマーたちに親しまれて20年。幕山の顔のような人が登山道を歩いて撮りためた野草を一挙公開した。透けた花弁の脈や宝冠のように咲く花々など150種以上。「ぜんぶ登山道だけで撮ったんです。それ以外の花も探したら何種類増えるのか。終着点が見えないね」。1年間で50回幕山に登る人にとっても、そこはなお奥深く未踏の地だ。
○…横須賀に生まれ、3歳の時に疎開で湯河原町宮上に移住した。湯河原小学校時代の遊び場といえば千歳川。当時はウナギも獲れ、河岸には水車、ホタルも舞っていたという。かつての田園風景を思い返して目を細めた。小さい頃から手先が器用だった。乳母車の車輪とハンドルを組み合わせて即席のカートを作り、理想郷(別荘地)の坂道をガラガラと下ったのも懐かしい。「よく、うるせーって怒鳴られたなぁ」。
○…湯河原中学校を卒業後は木工所や鉄工所での勤務を経て、富士フイルム(株)に就職。フイルム両端に並ぶ穴を開ける作業に配属された。製品の感光を避けるため暗室になっており、ほぼ手さぐりの職場で10年以上を過ごした。「真っ暗でしたね。同僚の顔も分からなかったけど、慣れるんです。外がまぶしかった」。ビデオテープや「写ルンです」の製造に携わり、15年前に定年を迎えた。
○…休日は家でゴロゴロ、そんな生活を改めようと始めたのがボランティアガイド。観光客の役に立ちたい一心で現地に立ち始め、山の魅力を歩いて探し、撮ってきた。長年フイルムに携わっていたが、今愛用しているのはデジカメ。「どんどん削除できるから、シャッターの重みが変わってしまった」とぼやく。変わったのはカメラだけではない。山では花の持ち去りが後を絶たず、数が減った種もある。だからこそファインダーの向こうに残しておきたいのだろう。暗室で鍛えた両目には幕山の宝が一層輝いて見えている。
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