今月22・23日開催 寄木が主役の音楽イベント「るちゑのやどりぎの下で」を準備する 清水 勇太さん 箱根町在住 31歳
売りたいものを作る幸せ
○…箱根町畑宿で若手木工職人の仲間たちとイベントを企画した。この日は山々に囲まれた寄木の里を、ラテンを思わせる打楽器の音色が彩る。「仲間の分と合せて10種類です」と見せたそれは一見すると寄木細工。いたずらっぽい笑みで手に取るとマラカスやギロにも似た軽やかな音色が。キューバやブラジルを旅した経験が創作の種になったのだろう、伝統的な寄木の箱を作るうちに砂を入れて降るアイデアがひらめいた。頭にはかつてない寄木の形が渦巻いている。
○…東京生まれの新潟育ち。武蔵野工業大学で構造やデザインを学ぶ傍ら、旅先でふと立ち寄ったのが畑宿、ここで手にした寄木の模様に衝撃を受け、惹きこまれた。「ここで一歩を踏み出さねば自分は倒れる」。箱根駅伝の寄木トロフィーで知られる金指勝悦氏を訪ね、工房を手伝い始めた。しかし憧れの寄木職人の道も簡単ではない。「刃が回転する昇降盤がどうしても恐くて。機械が弾いた木材が天井に吹き飛ぶ位ですから」。ただでさえ市街地から離れた畑宿に、同年代の仲間は少ない。将来像も思い描けない。目標になってくれたのは、貪欲なまでに新しい寄木を追求する師匠の後ろ姿だった。「学生時代の友達の中にはゼネコンに就職したり、自分の3倍稼いでいたり。でも自分はいつにも増して積極的に生きていると思う。売りたいものを作れるんですから」。寄木を並べた室内を見渡す。この世界に入って約10年、念願の独立を果たした。
○…丁寧な語り口はホテルマンの接客のよう。温和なキャラクターが仲間を引き寄せたのだろう、小田原の若手職人たちをも巻き込んだグループの兄貴的な存在に。「彼らと飲んだ後がチャンスです。頭がシェイクされるのか、不思議と新しい寄木を思いつくんですよねぇ」。時折酒をはさみながら縦横にまとまる仲間たち。この秋、そんな若木の束が新たな寄木模様を生み出そうとしている。
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