テレビ番組や地域イベントなどに出演する 阿部 剛さん 湯河原町宮上出身 42歳
目標に肉薄、声の匠
○…実家は湯河原にあったラーメン店。少年時代からもりもり食べ、新崎川で泳いだりミカン畑で駆け回るうちに、湯河原中学校の頃には体重が120kgを超えたという。この体格を見ていた陸上部の顧問が何をひらめいたのか「相撲大会に出よう」と言い出した。練習を重ねたわけでもなく、初出場の県大会で2位を獲得、関東大会に進んでしまう。学校に相撲部屋の親方もやって来た。が、結局相撲の道には進まなかった。のめり込む事が別にあった。
○…ものまね番組に釘づけになり「俺にもできるかな」と思ったのがきっかけ。まずは自主錬を重ね、カラオケで父・房夫さんに聞いてもらった。プロのバンド奏者だった父は「へたくそ」「ピッチがなってない」と手厳しかった。定時制高校を卒業した後もガソリンスタンドなどで働きながら番組のオーディションに挑んだ。20代の頃にようやく出演が決まったものの、放映でまるごとカット。めげずに36歳で再挑戦したフジテレビの「ものまね紅白歌合戦」で槙原敬之さんの声を見事に再現し、その後は他局の番組にも出演するようになった。今は生保の営業マンという二足のわらじで地元イベントも盛り上げる。
○…自分の声を録音しては本人の音源と聴き比べて直す。この作業を「本人に寄せてゆく」と独特の言い回しで語る。先日のワンマンライブでは多くの女性ファンに囲まれていた。スポットを浴びて顔は汗だく。「阿部ちゃんお腹出すぎ」「ヅラが素敵」などほろ苦い声援が飛ぶ。こうして名前が知られる前に父は他界した。「もし今聴いてくれても多分『まだまだ』って言われるだけですよ」。ライブはアニメやポップスで盛り上がり、バラードで観客が涙をぬぐい始めた。ものまね芸人というより心をがっしり掴む一人の力士、いや歌手だ。目標は「洋楽や昔の歌のレパートリーも増やすこと」。未開拓の土俵と観客を視野に、じりじりと距離は縮まっている。
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