川崎市は、犯罪被害者等に特化した市独自の支援条例を年内に制定しようと準備を進めている。先月末には施策案を発表。社会福祉士やカウンセラーなどの心理職を配置し、被害者等の精神ケアや刑事手続きなどに一括で対応する相談支援窓口を整備することや、経済支援策が盛り込まれた。
二次被害や経済面に配慮
犯罪被害者やその家族は、被害による心身の不調や周囲の心無い言動など二次被害に苦しめられ、日常生活に支障をきたす場合もある。市の施策案では、被害者等の相談を一括で受ける支援窓口を整備。2008年から市が設置する「犯罪被害者等支援相談窓口」は警察OBが相談員を務めてきたが、条例制定後は新たに社会福祉士や心理職など専門職を配置し、情報提供や必要な機関につなげていく。
被害者等は失業や休職、けが等の治療費負担、身の安全を守るための転居などにより、経済的困窮に直面することもある。施策では日常生活の支援として、見舞金の支給、家事や保育、住居などの資金援助やサービス提供も想定している。
暴行・詐欺も支援対象に
犯罪被害者支援をめぐっては、04年に国が犯罪被害者等基本法を制定。今年4月からの第4次基本計画には、地方公共団体における支援があげられている。神奈川県は09年に支援条例を施行。政令指定都市では横浜市など8都市で条例が制定され、支援が行われている。
川崎市では19年の登戸刺傷事件などの事件を受け条例制定の動きが進み、昨年度から今年度にかけて有識者会議が実施されている。市が目指す条例は、県の条例の支援対象となっている殺人、重傷傷害、性犯罪等の被害者や家族以外に、暴行や詐欺などの被害者等も対象とする。
昨年度、市の相談窓口に寄せられた件数は25件。県の支援対象者となる市内被害者145人からの相談はゼロだった。市担当者は「認知度向上は課題。条例制定後、市民に対し窓口の周知や被害者等の状況を理解してもらうことに力を入れていきたい」と話す。
市はウェブサイト「意見公募」ページなどで、9月末まで市民から意見を募集している。10月中に取りまとめ、11月に市議会へ提出。年内に条例制定し、22年度の施行を目指している。
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