議会報告 積極的に動き出す川崎市の「環境とエネルギー」― その「積極性」の是非が問われる ― 川崎市議会議員 上原まさひろ
目下、令和5年度の予算を審査する議会が開会されている。2月27日の自民党代表質問を皮切りに、各会派や委員会での審査等を経る。特に、私の所属する環境委員会関連では、例年稀に見る積極的な取り組みが目白押しだ。私の論点を記す。
■川崎市も「環境」と「エネルギー」待ったなしだが…
脱炭素化の動きは世界的に求められ、燃油価格高騰や電気代の上昇などがその風潮を助長する。かつて「公害の町」とも揶揄された川崎市だからこそ、環境問題、エネルギー問題には積極的に取り組むという市政方針だが、内容によっては市民生活への影響が分かりにくい。市民の皆さまからも多くのご意見を頂戴しているところだ。
■東京都に続く? 太陽光パネル設置義務化
特に物議を醸しているのが、地球温暖化対策条例の改正案だ。その中には、新築戸建等への太陽光発電設備の設置が義務付けられるとある。東京都に続くとされるが、メーカーなどに開発補助を行う東京都とは全く性質が異なる。義務の対象者は住宅メーカーなどで、罰則も勧告程度と軽微。いわゆるシリコン系の「太陽光パネル」は重く、災害時の二次被害等の懸念も払拭されない。サプライチェーンへの懸念もある。設置した市民には費用に対し便益が上回るとあるが、なぜ市が義務化するのかも論点だ。軽量で、国内で開発されたペロブスカイト電池などの新技術を見据えながら議論を進めたい。
■地域エネルギー会社の設立と市民生活
市は、過半を出資し、ゴミ焼却場の燃焼熱を市の施設ばかりでなく、私企業等にも販売をするための会社を設立する。先日そのパートナー企業群も選定された。今後、電力需給の高度管理にも取り組むが、そもそもごみ減量も推進している中、今議会で提案された内容では市民生活との関わりが不明瞭だ。太陽光発電設備の設置義務化と併せての議論が必要となる。
■集合住宅へのEV充電インフラ補助も
集合住宅へのEV充電インフラ整備の補助を第1の柱として、EV普及を目指す。EVカーシェアリングの実証実験も開始した。これまで水素燃料の推進にも注力してきた。拙速な取り組みは市民利益を逸すとの観点から、今後の方向性の明確化が必要だ。
■生活に直結するプラスチック一括回収
これまでプラスチック容器などのゴミは分別し、再利用してきたにもかかわらず、プラスチック用品そのものは普通ごみとして焼却してきた。今後、資源化処理施設の増強を経て、令和6年から川崎区で、多摩区は令和8年から両者を一括回収する。自宅内のみならず、収集場所においては回収頻度や時間の設定など、今後の市民生活に最も影響の出る施策だ。
■あくまで市民利益を
政令指定都市たる川崎市が社会的に与える影響は小さくない。積極性も評価する。とはいえ、拙速な議論と取り組みでバカを見ることがあってはならない。環境問題とその対策は国内外、官民のそれぞれにおいて日進月歩。市民の未来につながる議論を心がけたい。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>