議会報告 三沢川への完全排水をいかに実現させるのか? 川崎市議会議員 上原まさひろ
令和5年第3回定例会が閉会した。本議会では、高度成長期の公害に端を発し、市独自に制度化された、いわゆる「ぜんそく患者助成制度廃止条例案」が可決。他疾患の患者との公平性から賛成したが、多摩区のぜんそく患者の多さには疫学畑出身の地元議員として研究の余地ありと見る。
■変わらず強まる多摩区を守る覚悟
改選後の本年度から自民党会派の副団長に。議会に詰める時間は長くなるが、自身の質問は、水に縁の深い、多摩区の課題を。
特に令和元年東日本台風被災からの学びは、しっかりと形にするまで議論は欠かせない。
■明らかとなったハード整備の方向性
三沢川流域では令和5年度より、64億円もの大規模な排水施設整備が行われる。浸水被害や議論経過も本紙で都度報告してきたが、川崎市の奮闘はもちろん、土井隆典県議からの働きかけや県、そして稲城市からの協力が決め手となった。この場を借りて関係各位に謝意を表したい。
本年度の取組としては、菅北浦では、菅北浦交差点や府中街道から住宅地内にかけて合計約700メートルの雨水排水管の工事を予定している。また新たに、菅および菅稲田堤では、既存水路を有効活用しながら、新たな排水管を4キロメートル整備する。自然流下による排水が難しい地域でもある。これに対して4箇所のポンプ施設を整備する。今年度は、菅4丁目に約500メートルの排水管が整備される。
■課題その一
排水管の占用位置
4キロメートルもの排水管を、住宅地の道路に設置するという。市としては、既存水路のほか、他の企業の管が輻輳していることは課題と感じているという。排水管の占用位置の確保は今後、道路管理者等との調整を要する。
■課題その二
ポンプ施設の用地
この対策の肝は、ポンプ施設を実現しようとするところにある。ポンプ施設の整備にあたっては、一定規模の用地を確保する必要がある。公園等の公共用地を候補地として、関係期間と十分に協議・調整を進めるというのが市の考えだ。
■求められる地元との対話
川崎市としては、上下水道局のウェブサイトで工事についての進捗状況を公表してきた。今後は地元自治会等へ丁寧に説明していくという。
いつも子どもが遊び、市民が憩う公園がなくなるのか。なくなるのであれば他の公園は準備されるのか。あるいは必要な浸水対策と地元住民の憩いの公園を両立させる方策は導き出せるのか。今後の地元との対話が建設的なものとなるべく、取り組む所存だ。
■橋の長寿命化と最新技術
ところで、川崎市には橋は609あるという事をご存知だろうか。とりわけ水と縁深い多摩区には、210橋。やはり地域の安全を考える上で、橋が多いという特色は見過ごせない。近年は橋も高齢化が進み、市も長寿命化に取り組む。長寿命化対策工事を実施する際には、滑りやすいジョイント部に対策するなど、最新技術を用いて、廉価で気の利いたメンテナンスを求めた。
■責任所在が曖昧な水防倉庫
水防倉庫。国に水防計画を求められた県が整備した水防計画の中で、川崎市には、40年ほど前に設置されたものが9箇所存在する。管理者は川崎市だ。中身は土嚢袋などの資材だという。資材の維持は行ってきたとのことだが、市の消防局は使ったこともないことが本議会で明らかとなる。
■川崎市・危機管理に期待する「危機感」
先述のように、浸水被害の記憶が新しい川崎市である。コロナ禍もあって、庁内横断的にリスク管理をすべく、危機管理本部という部署が立ち上がった。市内にありながら、浸水対策に使われなかった設備・資材があった事に、気が付かなかったのは残念でならない。議会で取り上げたその他の例は割愛するが、川崎市・危機管理本部は「危機感」を持って、その役割を全うされたい。
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5月10日
5月3日