二本松事務所で働く湯川太一さん 箱根から浪江へ つなぐ職員派遣
「震災や原発事故があっても 鮭は川に戻ってくる」
原発事故の影響で町民が避難を続ける福島県・浪江町。避難先の拠点になっている二本松市の事務所で昨年春から働いている箱根町職員がいる。湯川太一さん(43)は介護福祉課の窓口で介護や災害弔慰金や生活再建支援手続などの事務に携わってきた。
箱根町では震災のあった年に町職員を同町役場や宮城県石巻市、岩手県大槻町に派遣しており、浪江町役場は当初、2週間ほどの短期で交代派遣だった。バトンを受け取った湯川さんが「長期」になったのは、過去に阪神大震災などでのボランティア活動の経験があり、また税務や福祉、関所など箱根町職員として幅広く経験していた事もある。単身で1年間働いたが、浪江町側の希望で延長が決まった。
現在、浪江町は「避難指示解除準備区域」や「居住制限区域」「帰還困難区域」として立入制限されており、窓口に来る町民は元の自宅で暮らせない状況が続いている。「自宅に戻れるのか戻れないのか、いまだに先が見えない状況。町民一人ひとり悩みも様々です」。湯川さんは月に1回ほど行方不明者の捜索の手伝いや倒壊家屋調査などのために町内に立ち入る。一度の放射線量は平均3〜7マイクロシーベルトで、積算しても200(東京〜ニューヨーク間飛行時の被ばく量)を下回っている。セイタカアワダチ草が生い茂り、ネズミが大量発生しているという。湯川さんは今月初旬に立ち入った先の請戸川で鮭の遡上に出あった。かつて鮭釣りで知られていた川だ。「震災や原発事故があっても、鮭は戻ってくる。感慨深かった」。
浪江の人々と話すと、箱根駅伝の話題になることも多い。「山の神」と言われた今井正人選手や柏原竜二選手は福島が輩出した名ランナーだ。湯川さんの任期は残り半年。「心身ともに健康で全うしたい。経験をどう生かし、次の支援にどううまくつなげるかが課題」と意気込みを見せた。
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