多摩区版 掲載号:2012年7月27日号
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川崎市アートセンターで7月30日に上映される「うつし世の静寂(しじま)に」のプロデューサーを務める 小倉 美恵子さん 宮前区在住 49歳

目に見えない繋がり感じて

 ○…生まれ育った川崎北部に今なお残る「講」の姿を記録しようと旧家を訪ね歩いた。高度経済成長期を境に徐々に失われていった古(いにしえ)の風習や、脈々と受け継がれてきた日本人の魂が細々とした灯火のようにそこにある様を見たとき、多くの人とこの情景を共有したいと強く感じた。「郷土史研究とも少し違った。ノスタルジーを表現したかったのでもない。消えつつある情景を前に、現代を生きる私たちが学ぶこと、感じることは本当にないかと問いかけたかった」

 〇…1963年、宮前区土橋に生まれる。田園都市線の開発が始まった頃、かやぶき屋根とコンクリートマンションが同居する町並みで幼少期を過ごした。小学校は分校ラッシュ、区外からの転入者で街が活気に満ちていくのを農家の片隅で敏感に感じ取った。「友人宅を訪ねると皆マンションの綺麗なお部屋。おやつにケーキが出て、夕食は洋食だって話している。そんな暮らしにコンプレックスを感じながら、強い憧れを抱いていた」

 〇…成人しても社会は相変わらず成長を続け、人々の興味は外へ外へと向かっていた。国際支援を行う財団に就職し、留学生に日本文化を伝えるワークショップに携わった時、転機が訪れた。農家に滞在する企画で訪れた日本の原風景に衝撃を受けた。「脈々と守られてきた家屋、生活。大切なものは皆、私達の足元にあると気付いた」。以来、平日は仕事を続けながら、週末にはカメラを持って旧家をまわる日々が始まった。

 〇…撮りためた映像は2本の映画になった。信仰と風土を描いた「オオカミの護符」は文化庁映画賞を受賞。「講」が結ぶ人と風土を収めた「うつし世の静寂に」は多くの反響を呼んでいる。現在は地方で新たに2本の映画撮影に取り組む。「古の人々は講や信仰を通じて自然や先祖と繋がった。目に見えない繋がりが現代の私たちに語りかけてくるものを感じてほしい」
 

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